INTERVIEW:田尾沙織 × 「san」
写真家田尾沙織とデザイナー&編集者のユニット「san」との本『flor y fiesta, zaragoza』
が発売された。
自費出版で、手製本で、500部限定生産という、このちょっと変わった本ができるまでを伺った。
---------- TRANSIT加藤(以下K):そもそもどのような経緯で出すことになったんですか?
田尾沙織(以下T):ある日グラフィックデザイナーの阿部さんから電話をいただいて、「世界のお祭りシリーズの本を作りたいので、一緒にスペインに行ってくれませんか?」って誘われて。ある日突然。
san(以下S):そうそう。もともと私たちは仕事仲間で、よく「世界のお祭り本とかできたら面白いね」とか「だったら、メキシコの骸骨祭りに行きたい!」とか話していました。もう4~5年前くらいからずっと。その時は軽いノリだったのですが、去年あたりになって一気に盛り上がり、「いま、やろう!」と。そこで、二人とも田尾沙織さんの写真が好きだったから是非彼女に、となり、お願いしました。

---------- K:それは、田尾さんとそのお祭りのイメージが合致したということですか?
S:今回田尾さんに撮り下ろしてもらったサラゴザのピラール祭に関しては、屋外に花で大きな祭壇を作りあげたり、各地の民族衣装を着た人々が集まるということで、実際は宗教行事なのだけれど、参加する人たちが楽しそうだったり、幸せそうなイメージがあったんです。その空気感を、美しくはもちろん、素直に撮ってくれるのは誰かな、と思った時に、田尾さんのイメージが浮かびました。田尾さんの写真にはいい意味での隙があるというか。それが写真を観ている人に撮られている世界へ入り込める余地を与えているような気がするんです。
---------- K:お電話をもらった時はどんな気分でしたか?
T:全然意味が分からないから、とりあえず一度会って話を聞きたいと(笑)。2人ともとっても良いデザイナーと編集だし、とても優秀だし。歳も近いのでね、「3人で行くのも面白そう!」というのが率直な意見でした。また特に、小さい手製本で、間に違う紙とか布を挟んだりしたいと聞いて。質感の違う物が入ってたり、サイズ違いのものがバラバラ入ってたり、そういう手作りの本の形式っていうのはすごくかわいいと思っているので、そんな話に惹かれ、やってみたいと思ったんです。
S:現地で集めたものを一緒に綴じるとか、ちょっと個人的で、1点ものっぽい雰囲気を残すというイメージは、二人の間で共有していたので、こういう形式になったのは奇をてらったわけではなく、自然な流れですね。特にマニアックなことをしている、という意識はありません。

---------- K:布とか薄い紙がいきなり挟まってるのですが、これらはサラゴザで?
S:そうです。現地で。やっぱりいくらいろんなものが手に入る時代とはいえ、それは決まったルートがある程度あるわけで、現地に行かないと出合えないものは、まだまだたくさんあるように思います。
---------- K:手作業は大変だったと思いますが、ひとつ作るのにどれ位の時間がかかりましたか?
S:印刷に出せるものは出して、間に挟む布や奥付を切ったり、表紙の写真を貼ったりと、各パーツを準備する作業にかなり時間がかかりました。製本して、奥付を貼って、スタンプを押してというところだけでいうと、たぶん、1冊あたり4~5分位です。二人で集まっては流れ作業でやっています。ちなみに、まだ500冊全部はできていません(泣)。クラフト感は大事にしていきたい反面、手づくりの拙さみたいなのは極力出ないようにしたいですね。
T:すごいですよね。私は細かいことが得意じゃないので、私には無理です...。のり付けとかしわくちゃになりそう(笑)。でも、二人がやりたいのってたぶん、たくさん刷れて全部同じ判型というよりは、もっと自由度があることなんじゃないかな。

---------- K:撮影はどのくらいの期間行ったんですか?
T:3人では1週間ほど。私はその後一人でバルセロナのあたりとか旅行してたんですけど。全部で2週間くらいですかね。
---------- K:お祭などは行ってみないと雰囲気が分からないところがあると思いますが、撮影は思った通りに進みました?
S:こういうシーンがあるといいな、とか。漠然としたイメージはあったのですが、行ってみないとわからない部分も多かったかな。例えば、前日とか全然お祭りが始まる雰囲気がなかったり、いろいろ関連イベントがある!みたいな情報が流れていたけれど、実際はあんまりなかったり......。
かなり出たとこ勝負ではありました。それでも、祭りの流れを見せなきゃどうしようもないので、基本的にはsequenceで見せていくのかなぁというのは、ぼんやり考えていましたが、本当にその程度。
T:予想外のこともありましたが、やっぱり当日人は多かった。本当隅田川の花火大会のような感じで。ただほとんどがスペインの国内から。スペイン人だらけ。このお祭の決まりで、献花するには伝統衣装を着なければいけないんですね。だからみんな各地からそれぞれの民族衣装を着て、パレードに出たり踊ったり、献花したり、すごい賑わいでした。


---------- K:久々のスペインはどうでしたか?
T:ご飯が美味しかった(笑)。というのは、前に行った時はドイツ人の友達と行ったので、その子がビーガンだったので、もうほとんど食事を摂れない、みたいな状態で。なので私も一人で食べるのはあれだったので、あまり食にこだわった思い出はなくて。でも今回は食べまくりでした。バルセロナも良いけれど、サラゴサには小さいバールがたくさんあり、ローカルのご飯はとてもおいしい!
S:美食三昧という感じで。ただ、撮影のあとは一気に大変でしたね~。10月にお祭りに行って、11月位にベタをあげてもらってから、年明けには荒選びと順番を決めて。で、デザインをしながら、装丁についての構想も同時に進めて。 仕様を決めて、見積もり出しては、手直ししたり。紙や印刷は結構悩みました。田尾さんの写真の部分は、印刷所に出して色校をとっていましたが、他のところは、ウェブの印刷所に出したりしていて。ページによって進行がまちまちだったこともあり、本ができたのは出展予定だった7月の「THE TOKYO ART BOOK FAIR 2010」の2日前ぐらいでした。最後の二人の集中力、半端なかったです!
---------- K:確かに。紙も色々使っているし、それに合わせて印刷所も変えたら、必然的に時間は通常以上にかかってきますもんね。でも本当、開くたびに思います。改めて、手の込んだ本だなぁと。プレゼントにも良さそうです。
S:ありがとうございます。お祭りの世界感が伝われば何より嬉しいです。 これからも、活動する上でのテーマとしては、お祭りにまつわる本のシリーズは続けていきたいです。
T:私も是非また!次は、今回時期的に行けなかったメキシコの「死者の祭り」に是非行きたいですね。


田尾沙織・・・1980年東京生まれ。史上最年少でひとつぼ展グランプリを受賞。雑誌、カタログ、CDジャケットなど幅広い範囲で活躍。今年2月にはケニア、7月にはフィンランドとデンマークの森で白夜を撮影するなど、テーマにそった旅をしながら写真を続ける。
「san」・・・「世界のお祭り本を出したい!」という、仕事仲間だったデザイナーと編集者のアイディアから生まれたユニット。本を中心に、ただし表現したいものに関しては形式にはこだわらず、今後も幅広く活動予定。
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