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写真家・松尾修が見た 
佐世保の夜の夢

Info | 2015.06.02

写真家の松尾修氏が、故郷の佐世保に多様な面から光を当てていく「サセボプロジェクト」
2014年に発表された『坂道とクレーン』につづく、第ニ弾は『誰かのアイドル』

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佐世保はちょっと変わった街だ。
九州の西端にあって、背後には山がそびえ立っているから、陸の孤島とも呼ばれる。
長らく人口流入はあまりなかったはずだ。

明治時代になって軍港として発展すると状況が変わっていく。
現在は巨大な造船所と、米海軍と自衛隊のベースがあるため、
街には絶えず"外の人"が出たり入ったりしている。

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そんな場所で、松尾氏が今回取り上げたのが女と男が織り成す風景。
流れ者のようにやってくる男たちの存在によって、
佐世保の夜街は、街のサイズ以上に発展してきた。

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写真家が見つめたのは、
主に日本人が通う山県町界隈と、米兵や寄港した外国人が集うセーラータウンで、
今日という夜を楽しもうとする人びと。
地元の人もいれば、遠い国から来た者もいる。
背後に写り込む街並みは、そんな人びとの足跡のように、
いろんな文化がごちゃまぜになって不思議な空間をつくりだしている。

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一人ひとりに注がれる写真家の眼差しはフラットだ。
それは多様な人びとが共に生きてきた佐世保に育ったからこそ、
生まれたものなのだろうか。

そうして、個々の違いは溶け合い、2つの夜街の違いも曖昧になり、
女と男の営みだけが浮きあがってくる。

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それは"グローバリズム"や"国際平和"といった言葉を軽やかに超えて、見る者に届く。
「サセボプロジェクト」で切り取られる街はどこか郷愁を帯びている。
それは様々な人が集まる港町において日ごとに営まれる夜の風景が、
国家という概念すらなかった遠い昔に、雑多な人たちが行き交う交易地で
繰り広げられた一晩の宴とどこかで通じているからなのかもしれない。

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サセボプロジェクト2
『誰かのアイドル』
著者:松尾修
装丁:ナカムラグラフ
発行:有限会社ストゥ
発売:6月2日(火)
定価:¥2,500 (+税)

*販売はサセボプロジェクトの web ショップ
amazon、一部書店より


松尾修(まつお おさむ)

1970 長崎県佐世保市生まれ、東京在住。
2008 『他人のアルバム』(サンクチュアリ)
2010 『通学路』(プランクトン)
2012 『写真論』(プランクトン)
2014 TSP01『坂道とクレーン』(STUH)