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長浜散歩 
TRANSIT30号長浜冊子取材裏話

Info | 2015.11.27

TRANSIT30号の小冊子で特集した長浜は、自然、歴史文化、人が一体となった素敵な街だった。日本一大きな琵琶湖は豊穣な自然をもたらし、豊臣秀吉をはじめとする戦国武将の物語に思いを馳せられる歴史は魅力的。ただ、それに加えて、人と人がつながりあって、自然と文化を活かす営みにこそ、長浜の魅力は隠されている。そこには都市でも田舎でもない、第三の暮らしを探るうえでのヒントが隠されていた。11月27日(金)には、代官山蔦屋書店で「d design travel」の空閑理編集長と、滋賀・長浜の魅力について語り合う。その前に、8月に行ってきた取材の舞台裏をちょっぴりご紹介。

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長浜・滋賀の自然のシンボルはやはり琵琶湖。古事記で「淡海の湖」(あふみのうみ)と呼ばれた湖は滋賀県全体の1/6の面積を占める。豊臣秀吉と柴田勝家が争った舞台である賤ヶ岳へ登ると、南に琵琶湖を、北に余呉湖を眺められる。山の上から果ての見えない湖を眺めていると、ここを「海」と名づけたのも納得。頂上までケーブルカーで登ったはいいが、帰りはケーブルの営業が終わっていて、歩いて下ることに。でも、当時の武士たちは歩いて登り降りしていたわけで、たまには自分で歩くのもいい。


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長浜の黒壁エリアを流れる水路は、街のすみずみまで張り巡らされている。取材中、「さざなみ古書店」の中村恭子さんに自宅を見せていただいた。町家を奥へ入っていくと、裏側の部屋が水路に面している。そこには机を置かれ、水の流れを楽しみながら本を読んだりすることも。町家は税金対策で間口が狭いものの、奥底に宝物を隠し持っている。地元の人の世界を少し覗き見ることができれば、旅はずっと奥行きを増す。


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長浜へ来て最初に食べたのは、長浜名物の「のっぺいうどん」。名は体を表すとはいったものだが、太麺のうどんを食べると、「のっぺい」という呼び名がしっくりくる。


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旧市街の所々で見かける巨大な蔵は、400年以上つづく曳山祭りに登場する山車を収納しておくもの。山車は町内のエリアごとに保管され、4月の晴れ舞台に備える。長浜の一年は、春の曳山祭りからはじまって、夏の地蔵盆や、冬のオコナイなど、季節ごとに伝統に祭事で彩られる。非日常のイベントは、町内で人と人がつながるきっかけにもなっているという。日頃からのお付き合いは大変なことも多いのだろうが、そんなところから長浜の伝統は育まれていったのかもしれない。


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©Luca Gabino
北国街道安藤家は、町人文化が色濃く感じられる場所。室内にあつらえられた木造装飾の精巧さは、よく見れば見るほどに驚きを感じる。別邸の建築と庭で一つの宇宙観を作り出そうとした北大路魯山人の思想のスケールにもうなるしかない。そして、若き芸術家にすべてをたくした安藤家の粋にも。そんな大胆さが、長浜の文化を育んできた秘訣なのかもしれない。


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©Luca Gabino
長浜の中心街にある「縄」は、地元の人たちで夜遅くまでにぎわう。マネージャーの菊池繁昭さんは、東京の恵比寿で同じ名前の店を経営していた。店内にネイティブ・アメリカンの小屋であるティピを置いた店は繁盛していたが、移住を決意したのは、長浜の自然と歴史文化に惹かれてのことという。魅力的な街には、魅力的な人が集まってきて、ますます街は輝きを増していく。


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©Luca Gabino
街中に突如としてそそり立つ長浜タワー。現在は電波塔としての役割を果たしているわけでもないようだが、その威容は異彩を放つ。赤と白の2つの色で統一されたタワーは、長浜にあって宇宙ともつながっているかのよう。


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八幡神社の境内にあった遊具が、長浜にメルヘンの世界を演出する。向源寺の庭には、金魚が気持良さそうに泳ぐ。街に彩りとユーモアを、子どもたちに想像の羽を与えてくれる行政のちょっとした粋。そんなところにも、文化を大切にしてきた長浜の伝統が感じられる。


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琵琶湖湖畔に佇む長浜ロイヤルホテル。今回の取材中の拠点となった。部屋から望む琵琶湖は朝から美しいブルーに輝いている。朝、昼、夕方と時間帯によって刻々と表情を変える琵琶湖は、ずっと見ていても飽きないほど変化に富む。夏には花火大会が開催され、湖面を色とりどりの花が飾り、約10万人と長浜の一年を通じて最大の人が集う。長浜における琵琶湖の存在の大きさが伝わってくる。


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©Luca Gabino
どっぽ村では、使用する農薬の量を抑えた農業を実践。そのために、絶え間なく生えてくる雑草を刈り取るなど多くの手間がかかる。ただ、周囲にある山や森の環境保全なども含めて、未来でも続けられる新しい形の農業を実践すべく、スタッフは信念を持って働く。仕事の合間の休憩時間には、農業だけでなく、政治経済などの社会問題から、たわいない世間話まで話に花を咲かせるという。そんなコミュニケーションを通してお互いの信念を育んでいけることに、どっぽ村というコミュニティの本質があるのかもしれない。


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どっぽ村にあるうぐら食堂では事前に連絡をしておけば、昼食を食べることができる。どっぽ村のスタッフによる手描きの献立や、どっぽ村で生産した食材を使った手作りの料理は、時間をかけて丁寧に作られたもの。美しい水田の真ん中にある食事処は、スローフードのエッセンスが詰まった場所だ。


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長浜市在住のみなさんに協力してもらって撮影も順調に進んだ。日本にありながら、ちょっとファンタジックな雰囲気を出すために、日中シンクロをすることに。15分ほどかけてセッティングしてから、いざ撮影へ。イタリア人写真家のルカ・ガビーノ氏は、軽妙な日本語でリラックスした雰囲気を自然に作ってくれる。撮影は撮影する人とされる人のセッションのようなもので、同じことは二度と起こらない。


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©Luca Gabino
高時川の川沿いにある秘密の場所で、釣った魚を焼いていた地元の少年たち。長浜にはまだまだ子どもだけの隠れ家がたくさん残っているからこそ、彼らも想像の羽根を思っきり広げることできる。なんといっても、自然そのものが最大の学び場なのだ。


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琵琶湖の畔にある集落、菅浦はかつて舟でしか近付くことのできなかった場所。交通の便がよくなかったからこそ、昔ながらの街並みを今でも有している。村の外れにある門の柱は真ん中からずらしてあり、下にある岩を動かせば門がくずれて隣の村からの攻撃を防げるようになっていた。今も絶妙なバランスで立って、村を守っている。


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菅浦にある旅館「つづらお荘」では、琵琶湖でのカヤック体験ができる。琵琶湖は湖面も穏やかで、初心者でも簡単に楽しめるのだ。パドルを自在に使えるようになれば、それほど力を入れなくても滑るように進んでいく。


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©Luca Gabino
琵琶湖に遊びに来ていた子どもたちのグループ。お揃いの白い水着はなんだが優雅で、ヴェニスで夏のヴァカンスをすごしているような錯覚に陥る。菅浦に至るまでの奥琵琶湖パークウェイは、気持ちのいい木陰がつづく道で最高に気持ちがいい。琵琶湖があるからこそ、長浜の地はいつも潤いに満ちている。