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作家と行く 星野リゾート青森屋
島本理生さんと旅した青森。

Info | 2016.12.14

誌面で連載中の、作家と日本の宿を巡る創作旅行記。
連載第4回目の旅人は、女性に高く支持されている作家の島本理生さん。

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津軽三味線やねぶた祭りなどの伝統芸能で知られる青森。ですが、新鮮な海の幸やおいしい日本酒、朝市や横丁などの大衆文化や、県立美術館や十和田市現代美術館などのアート界の盛り上がりなど、多様な魅力が混在しており、近年さらなる注目を集める場所。そんな青森旅に島本さんをお誘いすると「ずっと行ってみたかったんです!」という恐山を目的地に挙げてくれました。さっそく旅程に盛り込みます。

カラフルな魅力が混ざった、2泊3日の青森旅の様子をお見せします。

※この取材から生まれた島本理生さんによるショートストーリーは、
TRANSIT33号でお読みいただけます。

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訪れたのは、早々に暑さがひいて過ごしやすくなった8月の終わり。入り口で私たちを真っ先に迎えてくれたのは、美しい馬。そう、星野リゾート 青森屋のあるここ三沢は青森県東部の南部地方にあたり、かつては日本を代表する馬の産地。そんな歴史を重んじて馬が大事にされているここでは馬はそれぞれ名刺もあるほど(!)重役というわけです。

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馬車に乗り四季折々の敷地の散策ができるのが青森屋の面白いところ。取材時は青森産の珍しい種のりんごを数種楽しめる「りんご馬車」の時季。取材クルー一堂、りんごを一瞬で切り分けられる便利なカッターに驚くものの、青森の家庭ではお馴染みのアイテムだそう。そしてこの馬車、冬は車内全体がぽかぽかあたたまる「ストーブ馬車」に変身するそうです。
およそ22万坪という広い敷地には、宿泊施設や馬やポニーにふれあえる牧場、足湯などが、中央の沼をぐるりと囲むように点在します。

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なかでも島本さんが気に入ったのが、人と馬とが同じ家に住める構造になっている、この地に伝わる伝統家屋「南部曲屋」です。寒い冬には囲炉裏で焚いた火の熱で馬屋もあたたまるという、馬を大切に育てる東北の知恵が詰まっています。内部での食事はちょっとしたタイムトリップ気分に。

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華やかに装飾され縁起物として広まった「八幡馬」や古布を裂いてつないだ糸で織り上げた「南部裂織」など、素敵な民芸品が多いのも青森の魅力です。寒い冬を明るい気持ちで乗り越えたり、物を再利用して使うなど、北の地を生きる人びとの暮らしの知恵が垣間見えます。

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驚くことにこの敷地には、明治から昭和までの日本の経済界をリードした渋沢栄一の邸宅「旧渋沢邸」もあるのです。明治の名工による和風建築と増築された洋風建築が織りなすレトロモダンな空間に、激動の時代に思いを馳せるのもまた一興です。

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周辺を散策したらいよいよお部屋へ。こちらは客室の一例。南部裂織やりんごで染めた和紙がセンスよく散りばめられており、大人な遊び心が滞在を楽しませてくれます。

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敷地内にある源泉掛け流しの温泉も、青森屋の人気の理由。とくに池に浮かぶような作りの露天風呂「浮湯」は森の音、滝の音、そして四季の移ろいを全身で感じられる開放感が味わえます。冬季は露天風呂を囲む池にねぶた灯籠を浮かべた「ねぶり流し灯籠」が開催。あたりを覆う雪のなかから浮かび上がる勇壮な姿は圧巻の一言。

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腹ごしらえができた頃には「みちのく祭りや」での夕食の時間です。青森ねぶた、弘前ねぷた、八戸三社大祭、五所川原立佞武多という青森4大祭りを楽しみながら、青森の郷土料理をいただけるショーレストラン。ねぶたの山車が会場内を練り歩き、希望すれば花笠をかぶってのハネト(踊り子)体験も楽しめる。島本さんも浴衣に身を包み、これに参加しました。本当の祭りさながらの賑やかさで、お酒と料理が進みます。

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食事が終わっても、まだまだつづくのが青森屋の夜。まるで縁日のような雰囲気の「ヨッテマレ酒場」では、スコップ三味線の演奏や金魚すくいならぬホタテ釣りなどで、毎晩遅くまで人で賑わいます。大人も子どもも一緒に楽しむ、ほほえましい姿があちこちに。

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2日目は車で北上すること2時間で、下北半島の中央に位置する恐山へ。古くより湯治場としても親しまれていたという霊場内には、数種の温泉が湧き出て、あたりは硫黄の香りが充満。お湯は湯の花がたっぷり浮かぶ源泉。硫黄成分が強く、身体の芯からぐんぐんあたためます。古くからこのお湯が何万もの参拝者をあたためてきたのかと、歴史を思わずにはいられません。

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成層火山から成る恐山一帯は、ごつごつした岩が四方に転がり荒涼とした雰囲気。そこに水子供養のためにたむけられた無数の風車が映え、不思議な空気が漂います。そして歩みを進めると、地獄のような光景の向こうから、すいこまれそうなほどに透き通った湖、宇曽利山湖が現れました。恐山がよく天国と地獄に例えられるのはこのため。「想像以上でした...」という島本さんも、このギャップには驚きを隠せない様子。


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せっかく下北半島にきたのだから、と立ち寄ったのは、半島の最東端に位置する尻屋崎。そこで待っていたのは、寒立馬と呼ばれる巨大な馬。もともと寒気と粗食に耐え持久力に富む農用馬として重宝されていた種で、今はここ一帯で40頭ほどが放牧。ずっしりたくましい身体に驚いていたら、厳しい環境でも越冬できるようにたくましい体格になったのよ、と売店のおばちゃんが教えてくれました。

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馬といえば、そのあとで少しだけ立ち寄った十和田美術館でも馬の立体作品を目に。ここでもまた、新たなかたちで、南部地方と馬とのつながりを感じることになります。

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最後に、ユニークな旅のオプションとしておすすめしたいのが、八戸や三沢の「ナイトホッピング」、つまりハシゴ酒です。街中に小さな飲み屋がひしめき合う横丁文化が色濃い八戸では、地元の人は3-4軒のハシゴは当たり前というくらい横丁文化が浸透した街。迷路のようになった路地を探検するのが夜の醍醐味です。また昔から米軍基地がある三沢では、個性豊かなアメリカンスタイルのバーめぐりが通の楽しみ方。とはいえお店選びのコツや楽しみ方をまずは案内してほしい!という方に人気なのが、「Misawa Night Hoppers」さんによるナイトホッピングツアー。今回は八戸と三沢両方でお願いしたところ、酒場のみならず、街の成り立ちや特徴まで感じとれて大満足。酒場は社交場のようなもの。だから、酒場をみれば街がわかる、といってもいいのかもしれません。私たちは1泊目は宿で食事を楽しんで、2泊目の晩はこちらのツアーに参加。2泊以上されるならぜひオススメしたいツアーです。

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青森は南部地方の引き出しの多さに驚いた2泊3日の旅。ここでご紹介したものは、旅のほんの一部。果たしてこの旅がどんな物語になっているのか?本誌でチェックしてみてくださいね。


星野リゾート 青森屋
場所:青森県三沢市古間木山56
お問い合わせ:050-3786-0022

津軽三味線の演奏からねぶた、ねぶたをはじめとする青森各地の祭りや津軽三味線の演奏、各地の郷土料理など、一年を通してまるごと青森を楽しめる温泉宿。12月からは青森の各地域にちなんだ30種類の灯籠が館内にあたたかな光を灯す「灯籠ぬくだまつり」を開催。冬の寒さが厳しい青森ならではの、心まであたたまるようなサービスが目白押しです。


島本理生(しまもと・りお)
作家。1983年、東京生まれ。2001年『シルエット』で群像新人文学賞優秀作を受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で野間文芸新人賞を受賞。2004年『生まれる森』、2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』で芥川賞候補に。著書に『シルエット』『リトル・バイ・リトル』『ナラタージュ』『あられもない祈り』ほか多数。