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アイヌの姉妹を追ったドキュメンタリー映画
『kapiwとapappo -アイヌの姉妹の物語-』

Info | 2017.03.09

北海道阿寒湖のアイヌコタンで生まれ育ち、アイヌの伝統歌や演奏を
受け継ぐ姉妹を追ったドキュメンタリー映画『kapiwとapappo』が劇場公開中だ。

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東京に暮らし現代音楽家とのコラボをはじめ音楽活動を展開する姉・絵美と、
アイヌコタンに根を張り、飲食店経営や観光船で歌や演奏を披露する妹・富貴子。
北海道阿寒湖に生まれ、幼い頃からともに歌い演奏をしてきた2人は、
空を自由に飛ぶカモメ(絵美)と大地に根ざし咲き誇る花(富貴子)のごとく、
今は対照的な道を歩んでいて、大人になってから一緒にステージに立ったことはない。
そんな2人が東日本大震災をきっかけに「Kapiw&Apappo(アイヌ語でカモメと花)」としてライブデビューするまでの、山あり谷ありの時間を追ったのが本作である。

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アイヌの伝統歌「ウポポ」、竹製の口琴「ムックリ」、
また樺太アイヌ由来の弦楽器「トンコリ」など、
作中で姉妹が奏でるこれらのしらべが美しいのはもちろん、
お披露目に向けた練習風景や、ふとした会話のなかで口ずさまれる音のしらべには、
暮らしのなかで母から子へと受け継がれてきたことを思わせる、心地よさがある。

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「当初はタイトルに『アイヌ』という単語を入れるつもりはなかったんです」
そんな監督の言葉からもわかるように、画面に映る2人の日常は、
「民族」を通り越した、どこまでもニュートラルな視点で切り取られている。

アイヌの歌や踊りなどが観光地でショーとして楽しまれている今、
彼らの伝統はなくなってしまった、という意見もある。
けれど、本当にそうなのだろうか?その答えは書かれてはいなが、
答えを自分で探すためのヒントがあちこちに詰まっている。

クライマックスのライブシーンを観たとき、
彼女ら2人、あるいは今を生きるアイヌ民族にとっての
「生きること」「歌うこと」の意味が浮かび上がってくるはずだ。

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監督は、これまで数々の映画の助監督を務めてきた佐藤隆之氏。
今回、初のドキュメンタリー作品でての劇場デビューとなる。
歌い手として、母として、またアイヌ文化の継承者としての
姉妹の姿に魅かれて始めた製作は、完成までに丸5年を要した。

なるべく多くの人の目に触れてほしいとの思いから、監督はこんな言葉を寄せている。

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この映画は、アイヌをはじめとする少数民族に興味をもつ人、新しい音楽に出会いたい人、また現代の暮らしを見つめなおしてみたい人などいろんな人に観てもらいたい作品です。またアイヌ民族に関するドキュメンタリーとしても、母親である女性ふたりの普通のドラマとしても観ることができる映画になったと思っています。先入観なしにひとりでも多くの方に観ていただくことを願います。映画館でなくとも、街の貸しホール、さらに町の公民館などでも上映は可能です。そのために上映料はシンプルに設定しました。
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鑑賞はもちろん、上映にも興味のある方は、ぜひこの機会をお見逃しなく。

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また、現在発売中のTRANSIT34号では、アイヌ民族について基礎知識から
紐解いている。こちらも合わせて読んでいただきたい。


映画『kapiwとapappo』
企画・監督・撮影・編集=佐藤隆之/2016年(112分)
音楽=メカ・エルビス(サイバーニュウニュウ)
製作=office+studio T.P.S オリオフィルムズ

配給=office+studio T.P.S
Facebook page:https://m.facebook.com/kapiw2apappo/
公式HP:www.kapiapamovie.com

今後の上映:
3/11(土)〜4/7(金)@シネ・ヌーヴォ(大阪)
4/1(土)〜4(火)@シアター・キノ(札幌)
4/1(土)〜30(日)@シネマChupki田端(東京)
4/23(日) @生涯学習センター・マナボット(釧路)
5/13(土)〜19(金)@シネマJack&Betty (横浜)
こちらでも随時更新しています


佐藤隆之(さとう・たかゆき) 1961年山形県生まれ、関西育ち。大阪芸大映像計画学科中退後上京。フリーの助監督として劇映画、テレビドラマ制作に従事する。1984年大林宣彦監督『さびしんぼう』以降、堤幸彦、鈴木清順、廣木隆一、黒木和雄などの作品に助監督として参加。1995年テレビドラマで初監督。オリジナルシナリオ『山を見ていた』『あるアイヌの若者たちの肖像』がNHKサンダンス日本シナリオ賞にノミネートされた。その後、個人でのドキュメンタリー製作に転じ、今作が初の長編ドキュメンタリー作品。