TRANSIT /  Info  / here

旅する湿板写真館
Peta Photo Studio

Info | 2017.03.27

170324_010.jpg

湿板写真という写真技法がある。
世界的には18世紀半ばに登場したもので、日本には1850年代には輸入され、
1900年代に入る頃まで使わていた、古典的な撮影技法。
教科書にも載っている坂本龍馬のポートレイトや西南戦争の写真というと、
ピンとくる人は多いかもしれない。

170324_009.jpg

170324_012.jpg

この技法の特徴は、ガラス板に薬品を塗り、乾くまでに撮影から現像までの
一連の作業を終えなければならない、という少々扱いづらいもの。
けれども、それまで一般的であったダゲレオタイプと呼ばれる銀板写真に比べて、
感度が高く、撮影時間も10〜15秒で済み(ダゲレオタイプは10〜20分ほどかかる)、
さらにネガを作って何枚もプリントできるとあり、その後ガラス板が後のフィルムに
とって代わられるまでは、最先端の技術として讃えられた。

そんな今は廃れしまった湿板写真を使って、
移動型写真館として旅をつづけるユニットがPeta Photo Studioだ。

170324_002.jpg

170324_003.jpg

湿板写真を始めたのは数年前。
上昇しつづけるフィルムの値段に対して、自分たちで作れないかと調べ始めたのが最初という。けれど、取り組んでみると、なぜ湿板写真という手法がほとんど淘汰されてしまったのか、と不思議に思えるほど、自由な表現が可能なことに気づく。

「フォーマットを選ばないし、なにせ自分でフィルムを作れるというのが、可能性の幅も大きいですし、醍醐味でもあります。それなのに、そういった技法が失われかけていることに疑問を抱きはじめたんです。物や技術がどんどん淘汰されていく現代にあって、なにを残し、なにを残さないのか、日々のなかで常に選択を迫られているように思うようになりました」
そう話すのはPeta Photo Studioのメンバーのひとり、福井香菜子さん。

170324_008.jpg

170324_007.jpg

170324_006.jpg

また、湿板写真に取り組むなかで芽生えた感情は、技法についてだけではないと言う。
「被写体においても強く感じるようになりました。湿板写真は、簡単にいうとレトロに撮れる写真です。でも、民族衣装を纏ったアイヌの人々や伝統的なスタイルで猟をするハンターの方々、また節目を迎えた家族なども例外ではなく、湿板写真で向き合ううちに、彼らのなかに古くから息づく風土やアイデンティティを切り取るような感覚を抱くようになりました。それはきっと、今は廃れたこの技法を選ぶことで、後世まで残すことの大切さをより感じるようになったからかもしれません。きっと昔は自然と受け継がれてきたものが、現代においては困難で、とても夢のあることに思えてしまいます」

170324_004.jpg

170324_005.jpg

ここに載せている写真はすべてここ数年の間に撮影されたもの。
昔ながらの手法で映し出された現代の被写体である。
けれども、当時の空気感まで蘇ったように感じられるから不思議だ。
それは巨大な箱形カメラを向けられたときに少し緊張してしまったり、
撮影時間が長いために顔が若干こわばってしまったり、ということもあるだろうが、
なにより、湿板写真で撮影してもらうということ自体が、
かつてとは違った意味で特別なイベントとなっている、というのもあるだろう。

スマフォやデジカメで誰もが簡単に写真を撮影できる現代において、
写真を撮影する・今の状態を記録することの本質を振り返ってみたい。

170324_011.jpg

なお、ふたりは今年4月より北米・南米を周遊予定。
今後の活動やイベント出展情報などは下記サイトをチェックしてほしい。


Peta Photo Studio
www.petaphotostudio.com