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サーミの葛藤を描いた 映画
『サーミの血』公開中

Info | 2017.09.23

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北欧三国とロシアをまたがる一帯「ラップランド」に暮らす先住民族、サーミ。その知られざる迫害の歴史を、あるサーミ人少女の成長を通じて追った映画『サーミの血』が新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほかで劇場公開中だ。

サーミとは、ラップランドで、伝統的にトナカイ遊牧で生業をたててきた少数民族。公的にはEU域内で唯一の先住民族とされている。現代のサーミ人達は、かつての遊牧生活を手放し、一般市民とほとんど変わらない定住生活を送っている。しかし、彼らがかつて社会から偏見や差別を受けてきた歴史は、あまり知られていない。

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作中では、そんな時代を忠実に再現すべく、主人公 エレ・マリャには、実際にサーミ人の父親をもつアマンダ・シェーネルが抜擢された。

時は1930年代、サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う成績優秀な彼女は、進学を望むも教師からは信じられない言葉を告げられる。「あなたたちの脳は文明に適応できない」

自分の未来を自分で決めるという人間として当たり前の権利すら与えられない人生から抜け出すことを切望した彼女は、自分のアイデンティティを全て断ち切る決心をするーー。

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現在では、サーミの権利は1960年以降、大幅に回復している。しかしながら、その傷跡は今も残る。サーミとしてのルーツをもつアマンダ・シェーネル監督は、この作品の着想の多くを、自身の体験や一族の年長者たちから得たという。

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多くのサーミ人が何もかも捨てスウェーデン人になった。私は彼らが本当の人生を送れたのかどうか常々疑問に思っていました。この映画は、故郷を離れた者、留まった者への愛情を、少女エレ・マリャの視点から描いた物語です。
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差別とは、昔々のどこか遠い国の話ではなく、どんな時代や国にも存在する普遍的な問題だ。自身のアイデンティティやルーツ、身体的特徴との戦いは現代においても少なからずある。本作『サーミの血』は今を生きる我々に一体何を投げかけるのだろうか。

TRANSIT 34号オーロラ特集では、近代化と伝統の狭間で生きる現代サーミの日常に着目した現地取材や、民族の歴史をひも解く基礎知識などを収録。映画の予習・復習として、あわせて読んでみてほしい。
*渋谷アップリンクで開催中の「北欧マーケット」で販売中。
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映画 『サーミの血』
上映期間:2017年9月16日(土)〜
劇場:新宿武蔵野館アップリンク渋谷ほか全国順次公開

映画情報:
2016年/スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/108分/南サーミ語、スウェーデン語/原題:Sameblod/DCP/シネマスコ―プ
監督・脚本:アマンダ・シェーネル
音楽:クリスチャン・エイドネス・アナスン
後援:スウェーデン大使館、ノルウェー王国大使館
配給・宣伝:アップリンク

(c) 2016 NORDISK FILM PRODUCTION


アマンダ・シェーネル
1986年、スウェーデン人の母親とサーミ人の父親の元にスウェーデンで生まれる。2006年以降、数本の短篇映画を監督。2013年、デンマーク国立映画学校の監督学科を卒業。『サーミの血』(2016)のパイロット版である短編『Stoerre Vaerie』(2015)は、サンダンス映画祭でプレミア上映され、またヨーテポリ国際映画祭2015の短編観客賞、ウプサラ国際短編映画祭2015の最優秀短編賞など、いくつかの賞を受賞している。