TRANSIT /  Info  / here

韓国・北朝鮮号発売イベント第二弾
テーマは「北朝鮮の日常」!

Info | 2018.12.25

2018年12月20日(木)、TRANSIT韓国・北朝鮮号発刊イベントを、神保町にある韓国にまつわる本が並ぶブックカフェ「CHEKCCORI〜韓国の本とちょっとしたカフェ」にて行いました。ゲストは写真家・菱田雄介さん。編集長の林が聞き手となり、北朝鮮の日常についてお伺いしました。その様子を一部リポートします。

20181226001.jpg
満員御礼! 熱気あふれる雰囲気の中、イベントは始まりました

20181226002.jpg
菱田雄介写真集「border | korea」 5,940円(税込)上製本(クロス装)デザイン:加藤勝也+金晃平

TRANSITが韓国・北朝鮮を特集することを決定したのは昨年の12月頃。同じタイミングで、写真集『 border | korea 』(リブロアルテ刊)を見つけました。著者は菱田雄介さん。2009年から2017年まで、北朝鮮と韓国で撮影を重ね、両国の写真を見開きに並べた作品集です。

20181226003.jpg

20181226004.jpg

まず、この写真集『border | korea』についてからトークが始まりました。

林紗代香(以下、林):菱田さんはもともと、北朝鮮で撮影をされていたんですよね。北朝鮮だけの写真集にしようとは思わなかったんですか?
菱田雄介(以下、菱):そうしても良かったんですが、北朝鮮で撮影するようになって、韓国との違いってなんなんだろうと思うようになったんです。それで、対比させてみようと韓国でも同じように撮影することにしました。この『border | korea』は北朝鮮と韓国で撮影した写真をそれぞれ並べて構成したものですが、特に説明もしていないので、パッと見て同じ国かな?と思うような作りになっている。だけどよくよくみてくると、これは違う国なのではないか、じゃあこの違いってなんだろう?と考えるようなものにしたいと思いました。


20181226005.jpg

TRANSITでは本特集内で、菱田さんに北朝鮮の日常がわかる写真を紹介してほしいと依頼し、「平壌をめぐる四季」というテーマで12Pのストーリーを構成、執筆していただきました。

林:北や南に行く時、季節は意識していたんですか?
菱:いえ、全然していませんでした。でも、この「四季」というお題をもらって写真を選んで初めて、春夏秋冬すべて網羅していることに気づきましたね。(TRANSITに掲載した)北朝鮮の大同江で撮影した遊覧船の写真も気に入っていて、対になるものを撮ろうと韓国のハンガンで何度か粘ったけど思うようなものは撮れなかった。この小学生の女の子たちのように、奇跡みたいな写真が撮れた時には喜びもあったけど、『border | korea』には入れられなかった。だから今回世に出せて良かったです。
林:笑顔がキュートで、とてもいい写真です。

20181226006.jpg

菱:それにしても、なんでTRASITは韓国だけでなく、北朝鮮も特集しようと思ったんですか?
林:10年間、41号をかけていろんな国を特集してきましたが、お隣の韓国を特集してこなかったことはずっと引っかかっていたんです。そろそろやるべきなんじゃないかと。ただ、インドとか、あるいはオーロラや砂漠といった、旅のディスティネーションとしての強さはないので、旅雑誌としてどういう切り口でやるべきか迷っていたのもあります。
菱:でも、特集している女性誌とかも結構ありますよね。
林:オルチャンメイクやファッション、ソウルの飲食店ガイドとかですよね。でもTRANSITではそういった流行や旅の情報だけではなく、もともと一つだった朝鮮半島がなんで分断されてしまったかというところから始めたいなと。韓国観光公社の方が、北朝鮮も一緒になった特集を見たいと後押ししてくださったのも大きいかもしれません。
菱:韓国・北朝鮮特集って聞いたときは信じられませんでした。思い切りましたね。

20181226007.jpg

林:TRANSIT内の朝鮮戦争を紹介する記事で、第二次世界大戦後、敗北したドイツは東西に分断され、日本は分断されずに朝鮮半島が南北に分断されたという文章にハッとしました。日本が分割される可能性もあったなんて知らなかった。菱田さんが資料を持って来てくださいました。
菱:第二次世界大戦が終わった1945年8月16日に考えられた資料です。どういう形で分割されているかというと、農業とか工業とか戦略的なことも踏まえて、北海道や東北はソ連、関東から新潟まではアメリカ、四国は中華民国、中国や九州地方はイギリス......などのアイデアが確かにありました。結局これは実行されなかったけど、少なくとも可能性としてはあったわけです。
林:韓国・北朝鮮特集を作ったことで、自分たちの歴史を学ぶきっかけにもなりました。北朝鮮はニュースでしか知ることができません。政治の話しか見えてこない。だから今日は菱田さんに北朝鮮の日常をお話しいただきたいと思って。

20181226008.jpg

20181226009.jpg

菱:本誌で使えなかった写真もたくさんありまして......。いくつかお見せしていきますね。平壌のイルカショーはエンターテイメントとしてとってもよくできています。ひいき目ではなく、新江ノ島水族館よりすごいと思った(笑)。ガイドの若い女の子がスマホで自撮りしていたり、ビアホールでは20種類くらいのビールを飲み比べすることができたり。これは車からガソリンを抜いて、火を付けて焼き上げる名物料理、ハマグリのガソリン焼き。美味しいですよ。これは健康センターのところにある床屋さんですね。
林:街に広告がないから、どこで撮影したかわからないような写真もありますね。ヨーロッパのどこかかなって。

菱:マイナス20度の街を歩き回ってお昼ご飯、みたいなときに連れて行ってもらえるのが冷麺だったりする。えーって思ったりしますけど。真冬でも平壌っ子は冷麺が大好きだと言われて、震えながら食べました。
林:北朝鮮にいるときは、自由な行動や、気軽にその辺の方に話しかけたりはできないんですか?
菱:基本的にできません。日本語が話せるガイドさんがついて、行く先々でコミュニケーションを取るくらいでしょうか。僕の場合は何回も通っているので、前に撮った写真を渡したりすることで交流があったりしますけどね。僕が撮った写真を家に飾っていると聞いたりすると感慨深いです。6年通ったからこそ撮れたものもあるのかなとも思う。関係性といってしまうと違うかもしれませんが。

20181226010.jpg
北京経由で行くツアーで渡されたツーリストカード。基本的に、日本政府は北朝鮮への渡航は自粛を促している。

20181226011.jpg
撮影NGも多々あり、忘れないうちにこのノートに書き留めていたという。ポートレートを撮らせてもらった人の名前と年齢などもメモ。

林:2009年から通って、平壌に変化はありましたか?
菱:2011年末に金正日総書記が亡くなり、金正恩委員長体制になったわけですが、街は大きく変化しました。ファッションも変わりましたね。ブラウスやベルトの色が増えたりとか、形にデザインがついたりとか。個性が出てきたように思います。
林:将来、デニムを履く人たちも出てくるのかもしれませんね!?
菱:うーん、デニムはなかなか遠いかもしれませんが、金正恩氏の妻、李雪主さんがファッションリーダー的存在で、今後もファッションの幅は広がるかもしれません。

20181226012.jpg

林:今後、北朝鮮はどうなっていくと思いますか?
菱:国の体制は多分このままだろうと思います。南北首脳会談や、米朝首脳会談など、来年の動きが注目ですね。特に、朝鮮戦争の終結宣言がされるかどうか。北朝鮮の人びとは、みんな統一という悲願をもっていますから。
林:『border | korea』には、南北の学生や若い人たちがたくさん写っています。彼らが未来を担う世代ですし、良い方向にいくといいなとぼんやり思って......。
菱:ぼんやりとした思いが世の中を動かしますからね。ただ、平壌に住む若者たちは、現在の体制や暮らしに不満がないと思いますよ。
林:たしかに。この少女の笑顔に嘘はないと思いました。
菱:たまに、この写真集を見て、外国人が撮影に来たから無理やり作り笑いをしてるんじゃないのと言われることもあるんです。ですが、僕一人のために、こんな笑顔を見せてくれるわけがない。彼らには彼らの、本当の生活があるということを忘れてはいけないと思うんです。

20181226013.jpg

トーク終了後、たくさんの質問をいただきました。
チェッコリ店主でありCUON代表の金さんも質問コーナーに参加!「近い将来、北朝鮮に日本の読者と行って、文学をめぐるツアーを行いたい、作家にも会いたい!どうすれば行けるのでしょうか?」

菱田さん、会場にお越しくださった皆様、チェッコリの皆様、どうもありがとうございました。神保町で書店巡りをする方は、ぜひチェッコリにも足を運んでみてください。

20181226014.jpg

20181226015.jpg

20181226016.jpg