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個展『The Tourist』開催中の
リー・ミンウェイさんに
スペシャルインタビュー!

Info | 2019.06.05

パリを拠点に活動するアーティスト、リー・ミンウェイさんの個展『The Tourist』が、六本木のギャラリー「ペロタン東京」にて開催中(〜6月26日まで)。旅をテーマにした作品のことや、世界を飛び回りながらの制作活動について、来日したリーさんに話を伺った。

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Photographer: Kei Okano. Courtesy of the artist & Perrotin

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「ペロタン東京」で作品について語る来日中のリーさん。


-今回の個展『The Tourist』は、どんな作品ですか?

今回の個展はタイトルの通り「旅」がテーマです。私が親しくしている9人の友人にガイドになってもらい、それぞれ思い入れのある場所を案内してもらいました。雑誌などを通して色々な情報を得て旅をすることはできますが、今回は友人の案内で通常とは違う形の個人的な旅ができたと思っています。ギャラリーの壁に投影しているのは、街を散策している最中に撮影したお互いの写真と、その旅のガイドが、自身やその街について語っているビデオ。そしてギャラリーの中央に展示しているのは、旅中にガイドと2人で収集した、ガイド本人や街にまつわる品々です。

-どんなガイドと、どんな場所を旅したのですか?

美術館のキュレーター、ドイツ語の教師、ダンサーなど、ガイドたちのバックグラウンドはさまざまです。そして彼ら/彼女らが選んだのは、ニューヨーク、ジャカルタ、台湾、東京、パリ、ボストン......さまざまな場所を旅しましたね。時間は3時間に限定して、2人で町を歩いたときの出来事が作品になっています。すべての旅で非常に心を揺さぶられました。ガイドをしてくれたのはとても親しい友人たちなのですが、話をしていると知らなかったエピソードが必ず出てくるので、新しい側面をたくさん知ることができました。

-なるほど。展示している品々も個性的なものが多いですね。

はい。たとえば台北にいるピアニストの女性のガイドとの旅の品は、ピンク色のボールと楽譜です。これらを一緒に展示してほしいと言われました。このピンク色のボールは、彼女の心臓を象徴しているらしいんですよ。一見不思議なものですが、彼女の思いがこもっているし、展示する私の思いも間違いなく合わさっています。

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ピアニストの友人との旅の品、心臓に見立てたピンクのボールと楽譜。


-作品制作の過程で印象的だったことはありますか?

各地でガイドと私が撮影した写真を見比べてみて、2人の写真がまったく異なるものを写しているのがおもしろかったですね。一緒に並んで歩いていても、まったく違うものを見ているんだなぁと分かります。あとでガイドの写真を見て、「あれ、こんなのあったっけ?」という驚きがありました。投影している写真を見ていただけると、展示自体に更に複雑さや深みが出てくるので、是非実際に来ていただきたいです。この展示を見たあとに、たとえば自分の友達に東京を案内しなければならないとしたらどこを案内しようかとか、そんなことを考えてもらえるきっかけになったらすごく嬉しいですね。

-そもそも、『The Tourist』はどういったことから着想したのですか?

何年も前ですが、当時6歳だった甥とのやりとりがきっかけでした。彼が住んでいるローマに遊びに行った時に、「おじさんにローマのコロシアムを案内してあげる」と言われてついて行ったんですが、彼が連れて行ってくれたのはコロシアムの中にある野良猫の家族たちのすみかだったんです。同じ"コロシアム"でもこういった目線で見ているのだなぁと感心して、誰かに街を案内してもらうことを作品にした『The Tourist』につながりました。このプロジェクトは私自身もオーディエンスになれるので、とても楽しんでいます。

-リーさんは旅がお好きなんですね。

台湾に生まれ、サンフランシスコやニューヨークを経て、今はパリに住んでいます。両親は台北にいるので年に5回は帰りますが、常に世界中を飛び回っていますね。このあとも一度パリへ戻り、オーストラリア、スリランカ、そして北海道のニセコ......と、予定が詰まっています。すべて仕事に関わる旅ですが、それぞれの街に友達がいるのでプライベートな時間も十分とれて、ストレスはないですね。

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旅先で会う友人へのプレゼントに、必ず購入するチョコレート。パリの老舗〈ア・ラ・メール・ド・ファミーユ〉がお気に入り。


-これまでに何カ国ぐらい訪れたのですか?

そうですね、およそ35〜40カ国でしょうか。東京は、住んだことのない都市の中では最も訪れた回数が多いと思います。好きな街のひとつです。私のように安全に無理なく旅をできている人というのは稀だと思いますし、毎回どこにいくのも非常に楽しみにしています。

-ちなみに、台湾で大学生だった頃はまったく違う分野を専攻していたそうですね。芸術の世界に興味をもったのはいつ頃だったのでしょうか?

大学では生物学や心理学を専攻していました。生物学では必ず解剖があるのですが、血を見ると貧血を起こして倒れてしまうということがあったんです。向いてないんだなと思いました(笑)。でも当時はまだ何をしたいのかが分からなかったので、興味のあった建築を学び始め、その関連で美術史を学んでいくうちにのめりこんでいくようになりました。建築や芸術は、明確に正解や不正解を決めつけることがないところや、オリジナルなことができるところに惹かれましたね。

-数々の作品を発表されていますが、リーさんがとくに伝えたいと思うテーマはどんなことでしょうか?

私は人との関わりなどをテーマにおいていて、人同士の交流を生み出すような作品を制作しています。とくに私は家族を非常に大切に思っていて、それも作品のルーツになっているかもしれません。今はインターネットで繋がっている社会といわれていますが、みんな意外とそこから脱したいと感じているのではないでしょうか。東京、台北、ニューヨーク、パリなどどこでも同じですが、たとえばスポーツや読書、料理のクラブやサークルなどに自主的に参加して、物理的にほかの人と繋がろうという動きが起きていると思います。私はそういった人間の関係性にこれからも注目しいていきながら、作品を作っていきたいです。


photography = RUI YAMAZAKI


リー・ミンウェイ個展『The Tourist』
会期:2019年5月15日(水)~6月26日(水)
会場:ペロタン東京 
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階(地下鉄六本木駅3出口 徒歩2分)
開館時間:11:00~19:00
休館日:日、月、祝
観覧料:無料
URL:www.perrotin.com


◼︎リー・ミンウェイ
1964年、台湾生まれのアーティスト。サンフランシスコやニューヨークを経て、現在はパリを拠点に活動する。人間のコミュニケーションをテーマにした作品や参加型のインスタレーションなどを発表。90年代後半から注目を浴び、第50回ヴェネチア・ビエンナーレ台湾館(2003)、第18回シドニー・ビエンナーレ(2012)などの国際展にも参加し、精力的に個展を開催している。日本では、2014年に大規模回顧展「リー・ミンウェイとその関係展:参加するアート―見る、話す、贈る、書く、食べる、そして世界とつながる」が森美術館で行われた。日本での個展開催は2014年以来初となる。

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Photographer: Kei Okano. Courtesy of the artist & Perrotin