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Airbnbで"暮らすような旅"をする

Travelog | 2015.06.11
近代の日本人の旅は、さまざまに変化を重ねてきた。海外旅行が高嶺の花であった時代の団体ツアーや、安宿を求め歩くバッグパッカー旅、また世界一周ボランティアクルーズなど、そのスタイルは時代を象徴するように移行する。そうして今注目を浴びているのが"暮らすような旅"だ。たしかに、物の見方や価値観が多様化した今、人びとが旅に求めるものは、ポストカードになるような観光名所や行列をなして手に入れる高級ブランド品だけではもはやないだろう。現地の人とのささいなやりとりや地元の文化に触れる"体験"にこそ、旅の醍醐味を見出す人が増えているのだ。そんなローカル志向の旅人が宿探しに愛用しているのがAirbnb(エアビーアンドビー)だ。Airbnbがロンドンオリンピック(2012年)以降一気に普及したというロンドンへ、"暮らすような旅"をすべく行ってきた。
  • 掲載号: 未掲載 / 撮影 : 編集部(TRANSIT)
  • ルート: ロンドン・ショーディッチ地区

今回の宿は、イースト・ロンドンに位置するショーディッチ地区にあるアパートメント。中心街から地下鉄で約30分とそこそこ便利。かつ、歴史ある建造物が立ち並ぶ路地にはデザイナーのオフィス、ギャラリー、そしてIT企業などが軒を連ね、新しいクリエイションが生まれる街として注目されてから久しい。

Airbnbは"Air Bed and Breakfast"、つまり"空いている"ベッドと朝食のシェアからスタートしたシステム。今回宿泊したのも、とある男性のホストが旅行者に貸しだしているアパートの一室だ。ホテルのような豪華さはないけれど、朝起きると、大きめにとられた窓から自然光がたっぷり入るのが気に入った。近くには大きな高架があり、ビジネスマンを都市部へと運ぶ電車が忙しそうに通りすぎる。

マンションには当然、バスルームやキッチンも完備。食器や調理器具も揃っているので、材料を買って自分で調理もできる。外食で胃が疲れがちな長期間ステイには嬉しい限り。

朝ごはんには、カフェで買っておいたベーグルを。フルーツやクリームチーズはホストが用意しておいてくれたらしく、シンプルだけれどあたたかいおもてなしに、ちょっぴり心が躍る。

部屋を貸してくれたホストとはAirbnbのサイトを通じて直接やり取りもできるから、オススメの店やエリア、曜日限定のマーケット情報など、調べにくいローカル情報を出発前に聞いておけるのが良い。教えてもらったお店のメモと、周辺の地図を持って出発!

アパートが立つキングスランドストリートは、北はダルストンに、南はブリックレーン、そしてシティと呼ばれる金融街へとつながっている。「街歩きならここだね」と、オーナーにすすめてもらったブリックレーンストリート周辺へ行くと、どこもかしこもグラフィティだらけ。有名なBanksyの作品もちらほら。これらは日々描き換えられているそうで、昨日あったものが今日にはきれいさっぱり消えている、ということも少なくない。

本屋、理髪店、額装屋、鏡屋など、規模は小さいけれど、こだわりのある専門店が並ぶ。ホクストンにはバー、ブリックレーンには古着やアンティーク、などという具合に、通りごとに街の雰囲気もガラリと変わるため歩きつづけても飽きない。犬の散歩をする人をちらほら見かけ、地元の暮らしにも根づいた場所であるようだ。

一方で、「ACE HOTEL」や「ALLPRESS ESPRESSO」など、感度の高い国外ブランドの進出も多く、街に新鮮味を加えている。ここには、そんな"新しさ"を取り込み、付加価値をつけてアップデートしていくのに十分な土壌があるのだろう。

次は、アパートメントを北上し、今もっとも注目のエリアという、ホクストンへ。ショーディッチと同じくイースト・ロンドンに括られるこの地区にも、アーティストやギャラリーが近年続々と集まっている。

有名なテムズ川に平行して流れる、リージェンツ運河へ行きあたる。河沿いの道は格好のランニングルートらしく、夕暮れ時にはランナーによりちょっとした渋滞ができていた。

岸には「ナローボート」と呼ばれる船が停泊しており、聞けば、週末や長期休暇にこれに乗って家族と旅する"行楽用"と、ここに住む"居住用"があるという。どちらもトイレやキッチンが併設されており、キャンピングカーのような作り。家を売ってナローボートで暮らす人もいるというから、これも"暮らすような旅"のスタイルのひとつだなと思う。

こちらは市内でよく見かけた、青い自転車の駐輪場。一度登録すると、近くに設置されている貸出機からだれでも利用できる。自由気ままに街を散策するのに役に立つ。

このような半地下状の集合住宅が多いのもロンドンの特徴だ。ヴィクトリアンタイプと呼ばれる建築方法で、120年以上前に作られたものだそう。ちなみにイギリスの場合、日本と逆で、建物が古ければ古いほど家賃が高くなる仕組みのため、古い建物を改修し大事に使う人が多い。

通りがけに立ち寄ったアットホームなカフェ。スタッフの子に「1枚撮らせて」お願いすると、チャーミングな笑顔を向けてくれる。この街には、旅行者にフレンドリーな人が多い。

街歩きに没頭していたら、気づけばすっかり陽は落ちていた。繁華街を歩いてみれば、周辺の夜は意外と早く、12時を過ぎると大半のお店が閉まってしまうよう。そんななかみつけたベーグルショップの灯りに吸い込まれるように店内へ入ると、真夜中でも元気な店員さんが迎えてくれた。厨房の湯気でほんのりあたたかい店内にほっとする。プレーンベーグルがひとつ約50円というお手頃価格で、地元の人にも親しまれている様子。

ようやく帰宅。寝室に戻ると、周りは住宅街のためとても静か。なんだか自分の部屋に戻って来たようで、旅の緊張が一気にほぐれるよう。

Airbnbの宿には、いわゆる街の中心地ではない住宅地や郊外も多く、地元の人が普段どのように暮らしているかをうかがい知ることができる。それらは、観光地の情報とは違って外からは見えにくく、だからこそ、現地での発見は多い。見方を変えれば、近所の散歩でさえ刺激的な体験となるのだ。ちなみに、Airbnbではベッドのみの貸し出しから、複数人でシェアできるフラットルーム、古城まるまる1棟を1ヶ月単位でレントなど、その時の気分・状況に合う施設を選べるのも特徴。宿の選択肢はもちろん、出会いや発見に満ちた旅そのものの可能性をも広げてくれる。次の旅のトレンドは、このツールから生まれるかもしれない。

【WEBサイト】 Airbnb 日本公式サイト

  • 掲載号 : 未掲載 / 撮影 : 編集部(TRANSIT)
  • ルート: ロンドン・ショーディッチ地区