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祈りの深部に向かって、ヒマラヤ山麓の王国を西から東へ

Travelog | 2012.11.10
世界で唯一、チベット仏教を国教とするブータン王国。近年まで、鎖国に近い政策がとられていたため、仏教文化が色濃く残る彼の地にも、少しずつ変化が訪れている。玄関口である西部から、ブータンのなかでもさらに奥深い秘境、東部へと、写真家・津田 直がシャッターを切った。

ブータンの玄関口となるパロ国際空港の滑走路に立つと、歴代国王のポートレイトが並び迎えてくれる。王冠のワタリガラスはブータンの守護神の化身と言われている。

1年振りに訪れた首都ティンプー。近代化がますます進み、町はすでに建築ラッシュとなっていた。果たして風景は今後どこまで変わってゆくのだろうか。

茂みの奥に佇むタンゴ僧院。創建のきっかけは瞑想している時に馬の鳴き声が聞こえ、この場所だと閃いたからだと聞いた。標高2800mという深山に位置し、現在は300人近くの僧侶が学び暮らしている。

山道で偶然出会った僧侶は、瞑想する日々を送っているらしい。僧院を離れひとり仏道を歩む姿を前に、若き僧侶は励まされたことだろう。

東西縦貫道にはドチュ峠があり、谷が深いので霧が立ち込める日も多い。108基設けられた仏塔が濃霧に霞み、まるで道は中空へと伸びてゆくようだった。

東部へ向かうと途中悪路に出くわすこともしばしば。雨期には土砂崩れも頻繁に起きる。道の整備にはインドからの出稼ぎの人々が目立つ。彼らは早くに結婚をしてそこから稼いでゆくブータン人と違い、先に稼いで蓄えを持って自国へ戻り家庭を築くらしい。

ブータン料理に欠かせないのは、何と言っても唐辛子!旅を通して克服を!(だが実際、そんな気合いはどこへやら。そううまくはいかない...)

西部ブータンのロベサ村は歩いていて楽しい小さな農村。市場の端っこでは縄跳びする子供達と出会った。横では犬が泥んこになりじゃれ合っていた。

川の合流点に在るワンディ・ポダン・ゾン。2012年6月、370余年の歴史を持つ城郭はたったの5時間で焼失してしまった。それは信じられないニュースとして僕にも届いた。一部の仏具は難を逃れたと聞いたが、経典をはじめ失われた物の大きさは計り知れず、国王自らがブータン人の心を癒しに駆けつけた。その姿は世界に映像として流れた。若き5代目国王の存在は日々、人々を支えつづけている。

東部ブータンのタシ・ヤンツェで訪れた伝統技芸院では、仏画を描く学生達の教室を覗きにいった。描いては消して、その繰り返しで像を整えてゆく。するとノートには彫刻のような仏像が浮かび上がってくる。

民家の仏間にお邪魔すると、ダライ・ラマ14世、ジャンテル・リンポチェ3世をはじめ高僧のポートレイトが所狭し飾られている。ブータン在住の高僧も多いが、中にはタイ王国、米国などに暮らし活動を行っているケースもある。チベット思想の旅に終わりはない。

小さな祭壇は日々通ってくる村人が守っている。真中には大僧正ジェ・ケンポのお姿を拝むことができる。

東部ブータンからインドへと向かう道を南下すると、すでに亜熱帯地域となり植生も変わり、緑が深まってゆく。いつか象をこの目で見届けたい。

サムドゥプ・ジョンカはインド国境の町。隣国インド・アッサム州や少数民族の多く暮らすアルナーチャル・プラデーシュ州から入ってくる文化が混ざり合い、トラックが行き交い賑やかなところだ。情勢によっては閉じてしまうこともあるので出国路としておすすめではないが、ブータンを隅まで味わいたいならば、陸路でブータンを後にするのも良いだろう。