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サーメ人の懐へ

Travelog | 2013.03.05
極北に暮らす先住民族、サーメ人。内陸部と海岸部を季節とともに移動し、トナカイを放牧する人たちのことだ。数千年にわたるトナカイとの暮らし。夏に行われる祭事ポロ・メルキトスを見届けるため、写真家・津田直が北極圏へと旅立った。

ヘルシンキ中央駅は海辺も近いので、空にはカモメが舞う。

フィンランドを訪れたのは初夏の頃。駅構内は照明がいらないくらいに明るく感じたけれど、太陽の光が届かない冬の季節には灯りが大活躍に違いない。


ヘルシンキから車で走ること一時間半。フィスカルス村は現在アーティスト達が移り住み賑わいをみせている。


知り合ったアーティストの仕事場へ。近くには家具などを作る木工職人、陶芸家などが暮らし、制作の場はかつて廃墟となっていた工場跡などをリノベーションして活用されたりしている。



北への扉をいくつも開き、辿り着いた先はサーメ人の暮らす北極圏。運良く、出会ったトナカイ牧夫に連れられ、ポロ・メルキトス(広大な森に放牧しているトナカイを集めて、親子の照合をする行事)に立ち合えることになった。原野に作られた柵の中では興奮したトナカイ達が真夜中走りまわっていた。夜を徹して作業は一家総出で行われ、子供達も昼夜逆転の一週間を共に過ごす。


作業は教えずとも、親の姿を見て子はその多くを学んでゆく。トナカイと共に暮らす家族の元に生まれたならば、5歳くらいから家の手伝いが始まるという。かつて、日本もそんな暮らし方で一家がまわっていたに違いない。



夜中に行われるポロ・メルキトスを前にコーヒーで身体を温めるニールス。原野に立てられた仮設小屋は、各家族がそれぞれ建てていて、中には防寒具や寝具や食材を持ち込み、出番まで支度をして待機する。



トナカイ同士を見分けるのは、ナイフでカットされた耳のデザインによる。


トナカイの所有者は、春に生まれた仔トナカイの耳に親と同じデザインを刻む。こうした知恵をサーメ人は何百年受け継いできたのだろうか。


真夜中の太陽=ミッドナイトサンが湖畔に眩しく輝く。



かつてサーメ人はこうした素朴な家に暮らしていた。移築保存された伝統的な住居を見たければ、サーメ人の首都であるカラショーク(ノルウェー)へ行けば博物館があり、文化に関する展示品も充実している。



海のサーメ文化は紹介されることが少ないが、その逞しさは道具にも表れている。北の海に生きる男達の熱き情熱の結晶がここに在る。



炎が生活の中心にあった時代、そうした暮らしが出来ていた頃に僕はいつでも惹かれて、旅をしている。だから旅が終わり、荷物からは燻されたにおいがしばらく抜けなくても決して嫌な感じはしない。


ヨーロッパ最北端のマーゲロイ島からの眺め。一昔前には船でしか渡ることができなかった場所に今は道路が延びている。辺りはフィヨルドの険しい岩肌がひたすら続く。


ノルウェーで立ち寄ったアルタ遺跡で出会ったパリっ子達。二週間近く歩いて、ここへ辿り着いたと言っていた。つい先日連絡があり、今は次なる旅を計画中らしい。



ラップランドで最後に泊まった宿は、犬ぞりのためのアラスカン・ハスキーが150匹近く飼われていた。柵の中に入ると、壮大な合唱で歓迎!された。けれど、空きっ腹の時間にお邪魔するのは遠慮したい。



白樺林を抜けてゆくトナカイの群れ。動物たちも長い冬を乗り越え、夏を楽しんでいるようだ。彼らを見ているとどこまでも追いかけてゆきたくなるが、一方で僕らはすでに野生の本能が薄れてきている。来る未来、僕らはどこまで野生に戻ることができるのだろう。