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南へ!~目指せミャンマー極楽ビーチ

Travelog | 2013.06.14
お、左半分は全部海じゃないか、ミャンマーの地図をあらためて眺めてこの単純な事実に気がついた。南国なのにトロピカルなビーチがイメージできないなんて。歴史や軍事政権、民族問題、そして水島上等兵が知らぬ間に効かせていた負のバイアスのせいだろう。でもこの国の左半分はビーチなんだ、トロピカルな楽園国家に違いない。目指せ極楽、いざ最南端へ!白いビーチと流浪の海の民モーケン族を目指して、僕は冒険の舞台に魅惑のアンダマン海を選んだ。

まずは空路、ヤンゴンからメェイを目指す。眼下には予想だにしない景色が広がっていた。漫画のようなぐるぐるジャングルに、トロピカルな冒険への夢と妄想が膨らむ。


リトルヤンゴンとも呼ばれる高田馬場で知り合ったミャンマー人脈をたどってやって来たメェイ。さっそく紹介されたタンラ氏とハン君と合流し、海辺の店で宴会が始まった。ミャンマービールが咽を滑り、シーフードに舌が小躍りする。けど遊んでいるわけじゃない、いかにしてモーケン族と出会うか、どんな冒険もまずは打ち合わせからだ。


メェイの街中に、時を止めて静かに佇む日本人墓地があった。今はもう手入れをする人もなく荒れ放題だ。日本から持参した「鬼殺し」と「マイルドセブン」を供え手を合わせた。軍隊だけではなく、戦前から何かしらの事業や商売でやって来た日本人は多いと聞く。ふとミャンマー語の墓石が目にとまった。日本人のものだという。その男性は、戦後この地でミャンマー人の女性と結婚し娘を授かり平穏に暮らしていたが、ある日突然の政変の煽りを受け強制帰国命令が下ったという。妻子を置いて独り帰国する訳にも行かず、ついには自殺してしまったのだと。墓石のミャンマー名に、この地でミャンマー人として歩もうとした決意が刻まれているように思えた。歴史という大きな物語に翻弄された小さな物語。そのどちらも人間が紡ぐ物語だ。


南国のお寺はどこかひょうきんでいいね。もう仏か神か鬼か悪魔か妖怪か......わからん!ただ、そこはいい隠れ場所だ!


綺麗なビーチを拝むには、アンダマン海に点在するメルギー諸島へ行けばいいのだが、許可が下りない。賄賂も効かず万策尽きて、無許可で行ける近所のカラージョ島へ。なんとなく透明度は上がったが、アンダマンの実力はこの程度じゃないはずだ。しかし、こんなとこにまで仏様が。


島にはただ穏やかな暮らしがあった。海辺に小さな家を建て、魚を捕り、ゴムの木からゴムを作ってたまに街で売る。その暮らしが笑顔をくれるなら、それ以上に何を望む? ささやかに満たされた日々こそが楽園なのだ。


ハン君が昼メシに呼んでくれた。何年か日本で働いていた彼は、半年前には東中野の寿司屋にいたそうだ。料理の腕はなかなかのもの。タイカレーをはじめ、料理はどれもタイ風だ。ここはもう半分タイの文化圏なのだ。


食後、ハン君が連れて来てくれた湖畔の公園がヤバイ。おまえ、小便小僧じゃなだろ、ヘンなおじさんだろ。昼間からそんなもんイジって......、おい、ムケてるじゃないか!


メェイ最終日の日没。海の色はメコンでも、空の色は極楽浄土。明日はミャンマー最南端の街コートーンへ向かう。この海の何処かにいるはずのモーケンも、同じ色の空を眺めているだろうか?


メェイからコートーンへは、スピードボートで。外国人は有無を言わさず45USドルの特等席だ。パスポートチェックを経て乗り込むと、鬼のように冷房が効いた部屋でチープな天井のスピーカーから爆音シャワーが降り注いでいた。隣の席では見るからに寒そうな片肩丸出しの袈裟姿の僧侶。早くも足を投げ出し弁当を頬張っていた。地獄に仏。8時間もの爆音冷凍地獄に早くも不安がよぎる。数時間経ち我慢も限界と部屋の外へ出てみると、そこは荒波をかぶり灼熱に焦げる別の地獄が。でもこっちの方が楽しそうに見えるのは特等席の驕りだろうか?


コートーン到着。桟橋を渡りイミグレでパスポートチェックを受ける。国内移動なのに、まるで入国手続きのようだ。とは言えここはタイとのボーダーでもあるから仕方ないのかな。タイからの入国では滞在期間2週間リミットで移動は5キロ以内という制限付き。珍しく日本人と遭遇。タイからやって来たという。ここはヤンゴンからわざわざやって来るような街じゃなく、タイ旅行のついでにちょこっとミャンマーを覗くというのが、どうやら正しい訪れ方らしい。


ホテルの朝食。隣では昨日イミグレで会ったタ日本人が白熱の議論を交わしていた。タイ在住の彼等は「エホバの証人」の布教へちょくちょくやって来るそうだ。今朝の議題は、いかに怪しまれずに心を掴む第一声とはどんなフレーズだろうか? と、いうこと。いいね、怪しさの自覚、それこそが神の真実への第一歩だ。ちなみに、後日行ったヤンゴンでも「エホバの証人」の布教に出くわした。国が開けばビジネスだけじゃなく、いろんな宗教もやって来る。あ、これもビジネスだったっけ?


愛しの再会。こいつとは10数年前フィリピンで初めて出会った。小汚い皮を剥いて現れた澄んだ白い肌にドキっとした。それ以来、南国のマーケットを歩くときは知らず知らずこいつを目で探すようになっていた。季節があるのか、いつでも会えるわけじゃない。悲しいかな、いつも指差しで買うのでこいつの名前をいまも知らないままだ。まぁ名前なんか知らなくても愛せるんだよ。味を説明するのは難しいけど、一言でいうなら飽きのこない甘酸っぱさ。こいつを10とすれば、ライチやランブータンなんか6程度だよ。


スティーブ・ヴァイも真っ青。場末のナイトクラブで、ここじゃもったいないほどのバカテクギタリストがいた。そして歌うはこのヒョウ柄ねーちゃん、そのルックスとド下手っぷりに戦慄が走った!最南端のミャンマー、ダイナマイトな夜もなかなか面白い。


快調な旅もよくよく考えてみれば、結構なピンチに陥っていた。予算オーバーでモーケン族の島へは行けず、コートーンの海も相変わらずメコン色だ。このまま楽しく旅を続けて帰ったら間違いなく処刑される状況。なので必死に探したよ、せめて綺麗なアンダマン海の写真だけでも撮って帰らなきゃね。そして見つけたのはポーランド人がオーナーのリゾート。アンダマン海に散らばる島々には自由に行けないため、苦渋の選択だ。ここなら4泊で600USドル弱だし。しかも運良く桟橋にリゾートのボートが来ていて今乗れば連れて行ってやると言う。しかも今日を逃すとボート代に500USドル余計にかかると、また法外な値段。どうなってるんだ? ミャンマープライスは!と、叫ぶ間も惜しんで荷物をまとめてボートに乗り込んだ。小型ボートで荒波超えて3時間、夜になってやっと到着。暗くてよく見えないが、素足にさらさらパウダーサンドの確かな感触。素敵なコテージに案内されると、イケメン君がウエルカムドリンクを運んで来た。とにかく綺麗な海にはたどり着いた安堵と疲労と、結局金払ってリゾートかよっ!という敗北感が全身を駆け巡る。ここからはシナリオ無しの旅がいよいよ始まる。