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山の民の大切な一日

Travelog | 2013.12.25
54の民族が共生するベトナムは多民族国家。総人口の8割以上をキン族が占め、残りは数パーセントずつの少数民族から成り立つ。そんな少数民族が多数暮らすベトナム最北部には、むきだしの自然のなか日々紡がれてゆく、山の民のささやかな営みが溢れていた。

朝日がそそぐクワンバの街。一帯には、石灰石が侵食されてできたカルスト地形が広がる。中央の丘は通称「おっぱい山(The Double Breast Mountain)」

山の朝は早い。山道には、まだうす暗いうちから、荷運び用の馬や農耕用の水牛を連れて田畑へ向かう人びとが行き交う。


比較的温暖なハザン近郊は、年に2回収穫できる二毛作。約3ヵ月で収穫できるまでに。写真は美しい棚田が密集することで知られるホアン・スー・フィーの棚田。


山を降りて行くと、ちょうどターバン・ザオ族の一家が稲の刈り取りをしていた。ハザンでは9月末〜10月上旬が秋の収穫時期で、黄金の棚田が一面に広がる。


こちらは収穫後の稲藁をきれいに積み上げていく青モン族の夫婦。稲の刈り取りから脱穀まで、山での野良仕事はそのほとんどが手作業だ。


畑仕事は日が暮れるまで。夕方以降は自宅での作業がはじまる。これは馬や水牛のエサとなる植物を切っているところ。


標高の高い地域では、十分な稲作は難しく米は貴重。代わりに主食となるのはトウモロコシ。とりわけ険しい場所に暮らすモン族は、どの家の庭でもこれを蒸して焼酎を造っていた。


農作業以外には、日中ヘンプ(大麻)を織る女性たちの姿も見られた。写真は、ヘンプの茎から繊維を採るために水洗いしているところ。


取り出した繊維はしっかり乾かした後、手紡ぎでヘンプ糸に。それを織り機で丁寧に織れば麻布の完成。ヘンプ作りはモン族の村でよく見られる。

民族たちの日常がさまざまな野良仕事と家仕事ならば、彼らの娯楽は市場に出かけること。山間部では、決められた日にあちこちで市がたつ。写真はクワンバ近郊の山の麓で開かれた市場。モン族が9割以上。


自ら栽培した野菜をカゴに入れて持ち寄り、市場で販売する女性たち。久々の再会なのか、友人とのおしゃべりに花を咲かせる人がたくさん。


こちらは花モン族が大半を占めるバックハーの日曜市。オレンジやピンクの刺繍とチロリアンテープで飾り付けられたカラフルな衣装で、皆それぞれにおしゃれを楽しんでいる様子。

この日は、旬のザクロが大人気。ほかにもトマト、インゲン、タケノコ、唐辛子、バナナ、ザボンなど、市場は穫れたての生鮮食材で彩り鮮やか。

日本の昭和を思わせる、自転車引きのアイスクリーム屋さんも。木箱に入ったミルク味のアイスは子どもから大人まで飛ぶように売れていた。

一見可哀想に思えるけれど、山の暮らしに欠かせない家畜は彼らの大事な財産。馬、水牛、豚、鶏、山羊、犬......、家畜は健康なほど高値で売れる。

食材のほか、生活に必要なものはほとんど手に入るのが市場の良いところ。農具に種に肥料、調理器具、寝具、服、携帯電話......。種類は少ないものの幅広い物資が揃う。

どの市場でも必ず目にした「漢方薬局」。植物の種子や木の根、鶏の羽に亀の甲羅、カラフルな粉......など、効能は謎だけれど興味深いものばかり。


女性がオシャレに余念がないのは世界共通。青モン族の若者の間では、白シャツにベロアの帯を合わせるのが流行している模様。防寒用のマフラーは、アゴから巻きつけるスタイルが独特。


バックハーの日曜市では手のこんだ花モン族の刺繍布が旅行者にも人気。時代を感じる古布もたくさん。

女性が買い物に勤しんでいる間、男性はというと......昼から酒盛り(笑)。トウモロコシの焼酎を片手に盛り上がる、黒モン族の男性グループ。


市場は民族の人たちと仲良くなるのに絶好の場所。一声かけ、果物やお菓子などをひとつ購入するなどで、写真も快く撮らせてくれる。


早朝から開く市は、午後3時4時にはどこも店じまいに。山の奥地から来ている人が多いため、1時間かけて歩いて帰ったり、なかにはこんなミニバスで帰る人も。


街灯もネオンもない山の夜は、日が暮れると同時に、静寂と暗闇にすっかり包まれた。いつもと変わらない一日が、大切なものに思える不思議なひととき。

※取材で訪れたハザン省、外国人は特別な許可証が必要な地域。ホテルや観光案内所で入域許可証を取得する必要があります。