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路地裏のミクスト・カルチャー

Travelog | 2014.05.05
カリブの社会主義国キューバ。街を走りまわる1950年代製のアメ車、強烈な陽射しの下で輝く人々の笑顔は、それだけで魅力的だ。だが、そんなイメージから少し路地裏に足を踏み入れれば、スペインとアフリカの混血文化、国家的スポーツ振興、そして日本の武道が共存する、人々の日常にも出会えるのだ。首都ハバナ、古都サンティアゴ・デ・クーバを訪れ、彼らの信仰、そしてスポーツに触れる姿をのぞいてみた。

サンティアゴ・デ・クーバ旧市街から北へ約1.5kmにあるロス・オルモス地区。小気味よい打楽器のリズムとアフロな歌声が響く小さな路地では、男が恐ろしくしなやかな身のこなしで踊っていた。

ツーリストの姿もなく、100%アフリカ系住民という印象のロス・オルモス地区。彼らによる彼らのためのリズムを、おばさんも全身で楽しんでいた。

彼らが信仰するのはサンテリア。西アフリカの民俗信仰と支配者のカトリックの混交宗教だ。アフリカの神をカトリックの聖人に重ねた、20〜30種のオリシャ(神)がいるらしい。

サンテーラと呼ばれる司祭。後ろにはオリシャの像が。サンテリアに関する多くのことは撮影禁止だと聞いていたが、ここでは案外簡単にOKが出た。

サンティアゴ・デ・クーバのスタジアムにて、国内リーグのデーゲーム。暑さのせいか、観客もまばらなアウェイ・チームの応援スタンド。二重通貨の入場料は、外国人は約100円、キューバ人は約4円!

野球とともに人気の国技ボクシングは、アフリカ系住民の多いサンティアゴ・デ・クーバでは特に盛ん。海外遠征経験もある元選手のラサロが指導する少年ジム。炎天の午後2時、子どもたちがわらわらと集まってきた。

だいたい5〜17歳の子どもたちがこのジムに通っている。プロスポーツがないためオリンピックが最高の舞台だが、亡命しプロの世界チャンピオンにまで上りつめる選手もいるのは、野球と同じ。

ジムまで裸足でやってくる子もたくさんいる。ラサロ曰く、「国の経済状況は悪いが、貧しい国はボクシングが強い」。才能が認められると、各州にある無償の体育学校で国の英才教育を受けられるそうだ。

鼻血を出しながら打ち合う10歳に届くかどうかの少年たち。ただ眼の前の相手を倒そうとする本能と、生きた人間のまぶしい輝きを感じた。

小さなプロペラ機で2時間半、ハバナへと戻った。セントロ・ハバナにある静かで小さな路地の名は、カジェホン・デ・ハメル。アフロなペインティングが目を引く。

毎週日曜の正午、カジェホン・デ・ハメルの小さな路地がアフロなグルーヴに包まれ興奮のるつぼと化す。このイベント「ドミンゴ・デ・ラ・ルンバ」は、サンテリア文化をショーアップしたもののように見えた。ツーリストもローカルも関係なく、楽しむ人々でごった返す。

アフロ・クバーナの腰の入った迫力のダンスには、もう脱帽するしかない。

ペインター、ダンサー、そして司祭でもあるサルバドール氏。1990年ごろからカジェホン・デ・ハメルの路地にアトリエを構え、様々な創作活動をしている。

ハバナ・ベダード地区。日曜の朝、大音量のロックな演奏が、開け放たれたカトリック教会の扉から漏れてきた。

教会内では生演奏をバックに、司祭が聖書をラップのように語りかけるミサが行われていた。ヨーロッパのおごそかなミサのイメージとはまるで違う、そのグルーヴ感。アフロの影響を感じるは気のせいか。

黙って涙を流す人、瞑想する人、床にうずくまる人。それぞれの形で神と対話しているのだろうか。

かつて富裕層が多く信仰していたため、革命後もカトリックは反体制的と見なされた時期が長かったそうだ。信者の服装も小綺麗な印象。

住宅街が広がるセントロ・ハバナ。一見何でもない左の建物は、空手道の道場だった。

お稽古ごととしての空手道が、キューバではブームになっているそうだ。付き添いのお母さんたちも一生懸命。

セントロにある道場に通うアイリンダは12歳。「兄がやっていたので私も。でも数学が好きだから将来はコンピュータ関係の仕事に就きたい」

革命直後の1960年代、マグロ漁業の技術協力で沖縄からやってきた人々によって、空手道は伝えられた。「規律」や「和」を重んじる点が社会主義思想と通じるところであり、カンフー映画好きな国民性もあいまって、大人も含めた空手人口は6万5000人にまで増えているという。

刺繍された名前が微笑ましい。子どもたちの名前をカタカナで書いてあげたらとても喜んでくれた。

ハバナ市郊外の工場地区にあった道場。フィデル・カストロの肖像と日の丸が一緒に飾られていた。『五輪書』や『葉隠』を読んだという指導者もいて、社会主義と武士道の意外な関係には驚かされた。