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ジャマイカ紀行~自由への道!

Travelog | 2014.06.17
この世に不公平がある限り 自由を語るんだ 自由と解放を 僕らはこんなに長く束縛されてきた 立ち向かうんだ~ボブ・マーリーはバビロンシステムの中でこう歌った。理不尽に過ぎる境遇を生き抜いて来た人々。当たり前の権利を求めて立ち上がった人々。遠い国の色褪せた過去ではない。グローバリズムが本質的にもたらす悲劇の構造、西洋に"発見"されることで逃れられない生き地獄。逃亡奴隷マルーンの祭りと、ブラッククリスマスを通じて見た、カリビアンブルーに浮かぶ緑の楽園の、悪夢と光。
  • 掲載号: TRANSIT24号 カリブ海 / 撮影 : 山西崇文
  • ルート: アコンポンタウン~マルベルン~ネグリル

モンテゴベイのダウンタウンにある、サム・シャープスクエアー。7人いるジャマイカのナショナル・ヒーローの一人、サム・シャープ。奴隷だった彼は宣教師としても活動していた。1831年「セント・ジェームスの反乱」を煽動した罪で、翌年にこの広場で処刑された。もちろん彼だけでなく、多くの奴隷達も。勇気を持って立ち上がった善良な人々への惨い裁き。「奴隷として生きるより絞首台の死の方がマシだ!」処刑の直前、サムはそう叫んだ。この反乱がその後の奴隷解放へと繋がった。命がけの戦いが、この国を独立へと導いた。立ち向かった命、全てがヒーローだ!


アコンポンタウンは、マルーンと呼ばれる逃亡奴隷が83年間にも渡るイギリス植民地政府と繰り広げた戦いの末に勝ち取った自治区。1939年1月6日の調印を記念して、毎年1月6日に祭りが行われる。こいつを腕に巻いて、さあ祭りの始まりだ!

キンダーツリーの下で踊りが始まった。KINDAHとはアフリカの言葉で"ONE FAMILY"を意味する。逃亡奴隷マルーンを率いて戦ったヒーロー、コジョ直系の子孫であるローレンス氏の言葉が忘れられない。「白人も黒人も同じ赤い血が流れている!」今も昔も、この森に、空に響き渡るこの太鼓の音は魂の叫びだったに違いない。

ジャークチキンだけじゃなく、ジャークポークもある。目一杯、邪悪に決めて客を待つ!

昼間、まだほとんど客は入っていないが、音量だけはもうスタジアム級。空気と地面を揺らしながら夜を待つ!

ジャマイカで写真を撮るのは結構大変。けど、写されたい乙女心は見逃さない。本当に撮られたくない人は絶対に撮らせてはくれない。「なんで私を撮りたいの?」すぐに疑惑に満ちた目を向けられ、こんな質問が飛ぶ。「いや〜、あなたが素敵だから〜」「はるばる日本から来たんだけど、旅の思い出に...」即座に納得の行く答えを返すのは、まぁ難しいね。

ただ稼ぐ、儲ける、そのために人間はここまで野蛮な獣(けだもの)になれるんだろうか?この鬼畜の所業は、もう悪魔と呼ぶしかない。奸智に長けたこの悪魔どもがキリスト教を偉そうに携えてきたんだから噴飯ものだ。ここに描かれていたような過去を許して未来に向かうのは、真に人間の強さが問われることだろう。もし、白人が言うように人間が平等で自由なら、人の道に悖るこの獣のような振る舞いをどう償うというのだろうか?「奴らは人間じゃない」なんて居直るのが簡単に目に浮かぶが、もし1ミリでもそんな気持ちがあるなら聞いてみたい。何人たりとも、誰が人間で、誰が獣かなんて選別する権利など無い。白人に対し、一言も恨み言を言わないジャマイカの人々、その強さが余計に怒りと苦い気分を加速させる。

楽しそうな人々。この夜のにぎわいの中で、生きるために戦わざるを得なかった彼等の境遇に想いを馳せる。しかし、アコンポンタウンの自治獲得は完全なる勝利ではなかった。植民地政府は彼等より何枚も上手だったのだ。彼等の自治を認める裏で、彼等を他の逃亡奴隷グループへの番犬の役目へと仕立て上げたのだ。当然、それは他の奴隷達から恨みを買うことへと繋がった。オセロのように単純な白と黒の対立構図ではないところにも、ジャマイカという国の複雑さがある。

モンテゴベイから南海岸へ抜ける途中。ゲートをくぐると延々とサトウキビ農場が広がっていた。当時の生々しい奴隷達の苦難を想像するには、あまりに長閑な景色。

セントエリザベス教区にあるバンブーアヴェニュー。左右には広大なサトウキビと椰子の農園。その真ん中を突っ切る数キロに渡る竹の回廊。かつて、家畜のようにこき使われた奴隷達が過酷な作業の合間、この竹林の木陰で休息をとったという。

マグナム&ラム、ジャマイカの定番。極悪なエロがたまりません。

ベルモントという南海岸の小さな町にて。フィッシャーマン・キングの異名を取る腕利き漁師。ランチタイムを目指してビーチに着くと、本日の獲物を手に現れた。

獲物はご覧の通り。豪快に真っ二つ割で、焼きまくって揚げまくって、ロブスター三昧。ロブで満腹になれるなんてね。ラムのソーダ割りもビーチにはぴったり!

ロブスターの海辺のすぐ側にある、ピーター・トッシュの墓。Stepping Razor(歩くカミソリ)と呼ばれた彼も、今はここで静かに眠っている。墓の周りには例のクサが少しだけ生えていた。リーガライズ・イット!

ピーターの墓を出ると、ビーチに陽が沈むところだった。ここは確かに激しい国だけど、穏やかな海辺のひと時が、ほんの束の間すべてを忘れさせてくれる。

ラスタの新年行事ブラッククリスマスは、こんな風にテントを張って、さながらビンギのフェスのよう?夜の神秘的なムードから一転、昼間はお天道様の陽を浴びて、なんともピースなムードに包まれる。

昼間は木陰のベンチに座って世間話。「日本は中国と喧嘩してるんだって?」「ああ、ちっちゃい島を巡ってね...」拙い英語で説明を始めると、自分でもこんなつまらないことで、という気分になってくる。地政学的な意味や生理的な嫌悪感など、地球の裏側から自分達を眺めてみれば、なんともちっぽけな話し、だよね。まぁだからといってくれてやるわけにもいかないんだけど...。

夜通し叩かれるタイコ達も、昼間は気持ちよく日向ぼっこ。どれも年季が入ってる。

はい、ラスタヘア・コレクション。身体に刃物を入れないのがラスタの主義。痒くない?どうやって洗ってんの?と瞬時に思うけど、サラサラでフワフワ。変な匂いもしない。「これ、女が触りたがるんだよ、グフフフッ!」と、あるラスタのおじさんは立派な武器を見せるような得意顔でイヤらしく笑った。

ボスに全面撮影禁止を言い渡されて困っているのを見かねてか、一人のラスタウーマンが案内を買って出てくれた。優しく親切にいろいろ教えてくれたばかりか、仲間の写真を撮らせてくれたり、自分の小屋まで見せてくれた。彼女に限らず、ここのラスタの人達の垣根の無さと気さくさが心に染みた。コワ面のボス以外はね。

ブラッククリスマスの会場入り口に掲げられたモットー。いろいろあるけど、やはり最後は「ONE LOVE !」

最西端のリゾート地、ネグリル。朝日を浴びる名物の夕陽の看板。白人資本のリゾートで潤うのはやっぱり白人。奴隷が解放されたからと言って、対等になったわけでは決してない。現代の搾取や略奪は表向き暴力を伴わない分、より狡猾になっている。この構図が変わる日は来るのだろうか?もし、再びこの国を訪れたなら、黒人資本のリゾートでふんぞり返りたい。あ、ボーイはたぶん食い詰めた白人です。

カリブの海賊や奴隷、植民地、ラスタファリズム、そのどれもが僕らとは全く無関係な遠い世界の昔話のように感じてしまうことは、否めないだろう。レゲエにハマったり、ボルトを応援したり、ジャック・スパロウに憧れたり、ブルーマウンテンを飲みまくったり、カリブの世界を身近に感じるチャンスがあるならば、それはラッキーなことだと思う。遠い物語をグっと自分に引き寄せて、リアルな感情をその世界に浸すのは、とても豊かで意義のあることだ。彼等の苦難は、もちろん白人のせいだ。先住民を殲滅しその空白をアフリカから暴力的に運んだ奴隷で埋めた。スペインとイギリスのひたすら残虐なカリブ略奪の果てに19世紀の産業革命が起こり、列強を生み、それは世界を飲み込み日本へも迫ってきた。その脅威を列強そのものになることで立ち向かった日本人。だとすれば、カリブの現状は、まったく僕らと無関係に切り離された遠い物語とは言い切れないんじゃないだろうか?初めて訪れたジャマイカ、どうしたって今に至る歴史に目が行くけど、ビーチで楽しむ人々の笑顔は、この海のようにキラキラと輝く未来を見つめているんじゃないだろうか。

  • 掲載号 : TRANSIT24号 カリブ海 / 撮影 : 山西崇文
  • ルート: アコンポンタウン~マルベルン~ネグリル