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アマゾン川サウダージ紀行

Travelog | 2014.06.29
ブラジル北部を流れるアマゾン川を遡り、世界最大の大河に寄り添った暮らしを見つめた。旅の出発点は河口から1500kmの地点にあるアマゾナス州最大の都市マナウス。そこからアマゾン奥地の街テフェを経由して、さらに上流にある世界自然遺産のマミラウア自然保護区内へ。高低差がほとんどなく穏やかに流れる川を奥へ行くほどに、自然と人々の暮らしは近づいていき、やがて混ざり合う。最後、テフェからフェリーに乗ってアマゾンの流れに身を委ねると、ブラジル人の心の奥底にあるサウダージな感覚が溢れてくる。

飛行機がマナウス国際空港へ向けて高度を下げていくと、窓からアマゾン川が姿を現した。"川"というよりは、"海"という印象を抱かせる雄大さに驚く。そして、川岸に広がる緑のジャングルのスケールに度肝を抜かれる。マナウスは人口200万人を誇る大都市だが、密林の大海原にたたずむ孤島でもある。

マナウス周辺のジャングルで天然ゴムの木が発見されたのは19世紀末。ゴム景気がもたらした財を使って造られたものの一つが、アドウフォ・リスボア市場。パリの中央市場を模して、欧州から資材を輸入して建てたアール・ヌーヴォー式の建物。月明かりを受けて輝く市場は、そこだけ時間を超越しているような静謐さに満ちていた。


アドウフォ・リスボア市場の隣には魚、肉、野菜などを売るマナウス・モデルノ市場がある。早朝から、魚市場は活気で溢れる。世界最大の淡水魚ピラルクー、淡水ナマズのフィリョッチ、淡水イシモチの一種であるペスカーダなど、街中のレストランで食べられる魚はどれも絶品。マナウスには人だけでなく、アマゾンで釣られた魚や、川を通って運ばれた物資も集まってくる。


マナウスのランドマーク的存在と言えるアマゾナス劇場の内観。ヨーロッパ建築の技法を取り入れた劇場は世界最高レベルの音響を誇り、4月にはオペラ祭が開催され、海外から招かれた一流奏者がハーモニーを奏でる。ゴム景気のマネーによって欧州のような街並みへと変貌した都市は、"アマゾンのパリ"と謳われた。その名残が見られる劇場前の広場には石畳の空間が広がり、憩いの場として地元の人々に愛されている。


マナウス郊外に広がるリゾート「ポンタ・ネグロ」。他所からもってきた白砂を敷き詰めた川岸はリオの「コパカバーナビーチ」のよう。夕暮れまで、サッカーをやったり、波打ち際で水と戯れたり、ゆっくりと流れるアマゾン川の流れに合わせるように人々が休日のひとときを過ごす。マナウスのような大都市になっても、川のほとりでは時間のリズムが穏やかになる。


マナウスから下流へ10kmほど進んだ場所にあるネグロ川とソリモンエス川の合流地点。黒い川(ネグロ川)と茶色い川(ソリモンエス川)の水流は、水質、水の比重、流速の違いによって混ざり合わず、境界線を目視できる。マナウスから合流地点を見るためのツアーも。合流地点から先はアマゾン川と名を変えて海へとつづく。


マミラウア自然保護区は、アマゾン奥地の街テフェからボートに乗って1時間半ほど。ペルーに源流をもつソリモンエス川は、アンデスの雪解け水を集めて流れるため泥を含んで茶色をしている。そのため、太陽の光を鮮やかに反射し、空や雲も映し出す。


マミラウア自然保護区内でカヌーに乗ってジャングルの奥地へ入り込んでいく。日中で陽の当たる場所にはほとんど蚊がいないが、樹々に陽光が遮られた日陰へ行くと急に大群が襲いかかってくる。木の上のほうでは猿が枝から枝へと飛び移り、幹にはタランチュラがはりつき、空からは動物や鳥や昆虫の声が降ってくるように耳にこだまする。


自然保護区内にあるポサーダ・ウアカリ・ロッジ。外部から訪れる観光客が唯一宿泊できる施設で、宿泊、食事、ガイドによるツアーがすべてパッケージになっている。アマゾン奥地に残された雄大な自然を体験できるのに加えて、希少動物の保護をしている研究者や、地元のコミュニティで暮らす人々との交流もあり、持続可能な自然保護について多面的に学ぶことができる。


20年ほど前に村ができた以前から生えていた木は、守り神のようにそびえ立つ。その前につくられた広場では、大人も子どももサッカーボールを追いかける。ブラジルの国民的スポーツはアマゾン奥地でも大人気。訪れたとき、男たちは試合をするために総出で隣の村へ出掛けており、女や子どもだけが残っていた。

雨季と乾季では川の水面が10mも変動するので、川岸に建てられる家は高床式。簡素な木造の家は、村人同士が協力して自分たちでつくる。家の下では犬、猫、鶏が忙しく走りまわっていた。コミュニティ内の学校では、人数が少ないので年齢が異なる同士の子どもたちが一緒に学ぶ。村によってはインターネットつながっており、IT学習も行われている。

マナウスから飛行機で1時間半、フェリーで遡ると4日間ほどの距離にあるテフェの街。丘の上からアマゾン川を見下ろす。川面にはフローティングハウスが建てられており、川で生活している人たちも多い。空高くまで湧き上がった入道雲の下で雨が降っているのが確認できる。やがて雲が近づいてきて、街にも激しいスコールが降り注ぐ。この地で暮らす人びとは、目の前で展開する自然のサイクルをいつも肌で感じながら生きている。

川から街を見上げると、川岸の丘に沿うようにして家々が建てられている。その光景はリオのファベーラを彷彿とさせ、人々の暮らしはけっして豊かではない。ただ、アマゾン奥地の小さな街ゆえに治安はよい。家々が並ぶ路地へ分け入ると、川で子どもが遊んでいたり、道で昼食の鶏肉を焼いていたりと、生活感の漂う空間が広がっていた。


テフェの中心である港へ下りていく道をバイクが登ってくる。小さな街なので、道路を走るのは8割方がオートバイ。経済特区に指定されているマナウスは法人税が安いため、日本からも多くの企業が進出し、組立工場を稼働させている。バイクが人気のホンダもその一つ。


テフェを訪れたのはイースター当日。住人たちが総出で街を練り歩き、中心部にある大聖堂へ集まっていく。教会内では、祝祭日に特別に公開されたキリスト像が祭壇に置かれ、人々はイエスの身体に触れながら祈りを捧げていた。広場にもキリスト像があり、カトリックがアマゾン奥地の街で人々の間に深く浸透していることが伝わってきた。


テフェからボートで30分ほどの距離にある丘の上には、カトリックの修道院が建つ。19世紀に欧州からアマゾンへ赴任した宣教地たちは、この地で永遠の眠りについたものも多い。彼らの墓は修道院の敷地内に残されている。夕暮れ時に教会に入ると、静寂な祈りの空間が訪れる者を安心感で包み込んだ。


テフェの街で一番人気があるレストラン「Stylo」。なかでも、炭火で焼いたビーフは絶品!アルゼンチンの牛肉と似て脂身がほとんどなく、胃にもたれないのでぺろりと食べられる。サイドディッシュはキャッサバを炒めて粉状にしたファリャーニャ。肉や魚の料理にはたいてい一緒にサーブされる。ふりかけたり、料理に沿えて食べたり、アマゾンで生きる人にとって主食的存在。


テフェ発の乗り合いフェリーは毎日夕方に出発して、2日間かけてアマゾン川を下りマナウスへ行く。食事も出るが、水はあまりきれいでないので、街中で買い出しをしておくといい。個室を取らない場合は、寝床になるハンモックが必要。


甲板には隙間なくハンモックが吊り下げられる。港に到着する度にその数は増えていき、上と下に重ねるように吊るあたり、ブラジル人の人懐こっさと逞しさが垣間見えるよう。ハンモックは街なかの雑貨屋で売っており、2000円ほどで購入可能。

港を出発したフェリーを、猛スピードで追いかけてきたボートが横付けする。舟上にいたのは、一瞬、「海(川)賊?」と思わせるようないかつい男二人組。彼らはフェリーの壁によじのぼると、アサイーの袋詰を売り始めた。ビタミン豊富なスイーツは大人気であっという間に完売。男たちはさっそうとボートに飛び乗り、街へ戻っていった。

マナウスまで川下りをするフェリーを24時間体制で運転する。夜にはサーチライトで真っ黒な川を照らし、流木や浅瀬を回避して進んでいく。高低差がほとんどないアマゾンの川は流れがスローなので、明るい時間帯は操縦士も心穏やかに操作できる。この日は同じ時間帯にもう一隻のフェリーがテフェを出発し、並走しながらマナウスまで川を下った。


スコールがやんだあと、水浸しになった甲板で夕焼けを見つめる乗客たち。まる2日間とたっぷりある旅程で、人々はぼんやりと母なる川を眺めたり、甲板でおしゃべりやひなたぼっこをしたり、自然のリズムに合わせて時を過ごす。日本にいるときのせわしない時間から離れていると、少しだけブラジル人の心の底に流れる「サウダージ」の感覚に浸れたような気がした。




デルタ航空でブラジルへ!



今回のブラジル取材では、中南米路線が充実しているデルタ航空を利用した。アトランタ国際空港でサンパウロ行きの便にトランジットする間は、デルタ航空の空港ラウンジへ。新設されたアウトドアテラス「スカイデッキ」で滑走路を眺めながらリフレッシュしておけば、サンパウロへの飛行機旅をより楽しめる。

☞ WEBサイト デルタ航空 http://ja.delta.com/