【特別ウェブ連載】
旅が好きだから考えたい、環境のこと
vol.5 ユニークなエコシティ&コミュニティ

Info | 2020.10.16

人間活動によって地球環境が変化するなか、これから私たちはどのように暮らしていけばいいのだろう? できるだけ、環境への負荷が少ない暮らしがしたいと考え始めた人も多いはず。サステナブルな暮らしを実践する自治体や小さなコミュニティを、その取り組みとともに紹介しよう。


――――――――――――――


【自治体編】
20201016_1.jpg
©︎aurelian
フライブルク/ドイツ
(人口:23万人/面積:153.1㎢)

フランス・スイスの国境近く、ドイツの南西端に位置するフライブルク。中世の街並みが残る旧市街では、自動車の乗り入れを規制。高度な交通網が機能し、住民が公共交通機関や自転車、徒歩で移動できるよう、街が設計されている。また、
1970年代の原子力発電所建設反対にはじまり、再生可能エネルギーに力を入れている。1996年には、太陽光や太陽熱の利用を促す「ソーラーシティ・コンセプト」を掲げ、市内の電力消費量の10%を再生可能エネルギーで賄うことを決定した。また、街中に緑が多く、条例により樹木の保護が義務付けられている。住宅の前庭を住人が管理する「緑地の里親制度」を導入することで、住民が主体的に街の緑に気を配るように。

20201016_2.jpg
©Joe Michaels
レイキャビク/アイスランド
(人口:約12万人/面積:274.5㎢)

アイスランドは、1973年の石油危機以来、地熱発電に力を入れており、電力の30%が地熱発電、70%が水力発電というクリーンエネルギー大国。アイスランドは大西洋中央海嶺の上に位置しており、火山が多い国。火山の熱を利用した世界最大級の地熱システムがあり、なかでも「ヘトリスヘイジ発電所」は国内最大の地熱発電所。首都のレイキャビクでは、暖房の95%が地熱によって賄われている。

20201016_3.jpg
©︎beeccy
オスロ/ノルウェー
(人口:約65万人/面積:454㎢)

ヘルシンキやストックホルム、コペンハーゲンなど環境意識の高い北欧の首都なかでも、具体的な施策で注目を浴びるのがオスロ。「欧州グリーン首都賞2019」を受賞している。その理由の一つが、自治体の予算案に、どれだけのCO2を削減すべきかを数値化して、削減のために必要な予算を計上する「気候予算」の導入だともいわれている。また、オスロは電気自動車普及の先進国で、19年には市内の新車販売台数の40%以上に相当した。2050年までにはカーボンニュートラル(CO2の排出量と吸収量が同じになること)を実現することを目指している。2018年には、市内中心部の700か所の路上駐車場をなくし、車の出入りを規制する「カーフリーゾーン」も設定。自動車よりも公共交通機関や徒歩、自転車で移動したくなるようなまちづくりを行う。

20201016_4.jpg
©︎nickfalbo
ポートランド/アメリカ
(人口:66万人/面積:375.5㎢)

モータリゼーション(自動車の大衆化)に住民が反発し、1979年に「都市成長境界線」を設けて農地や森林を守り、開発エリアを定めた。公共交通機関や自転車、徒歩により、15〜20分ほどで目的地へたどり着けるように交通網が整備されている。自転車専用レーンは全長620㎞で、ペデストリアン(歩行者)ゾーンとしっかりと分けているところも双方の安全を守り、心地よく街を移動できるポイント。アメリカ全体での再生可能エネルギーの使用量は15%以下にも関わらず、ポートランドは33%。全米一クリーンな街と言われている。

20201016_5.jpg
©︎rop.photography
アムステルダム/オランダ
(人口:約82万人/面積:219.3㎢)

低地を開拓して運河沿いに栄えてきたアムステルダム。海面上昇にも対応するべく、水面上に浮遊式の住宅を建設するなど先進的な都市構想が進む。また、一部の一般家庭にはスマートメーターが設置され、エネルギーの消費量を可視化したり、GPSを活用してリアルタイムで渋滞を回避することによりCO2を削減したりと、環境とデジタルの融合が図られている。

【コミュニティ編】
20201016_6.jpg
パーマトピア/デンマーク
(人口:約225人/面積:0.29㎢)

パーマカルチャーの思想家や、ハウジング企業、エネルギー・オーガニックコンサルタント、工科大学など専門家が集まってつくった村。パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)を組み合わせた言葉で、農産物やエネルギー、住居がエコシステムとなり、サステナブルな生活の仕組みになっているということを指す。敷地には、90軒の家や共有の食堂、キッチン、ランドリーなどがあり、家は調湿機能のある無垢材でできている。雨水の利用や水の循環利用が徹底されている。住人は、週に数時間の農作業の義務が課されるが、それによって毎日1日に必要な野菜を収穫することができる。

20201016_7.jpg
クリスタル・ウォーターズ/オーストラリア
(人口:約230人/面積:2.6㎢)

オーストラリアのクイーンズランド州にある、1988年に設立された世界初のパーマカルチャービレッジ。植物や水域など生態系を重視する「バイオリージョン」という考え方が村のデザインに取り入れられており、敷地の80%は住人の共有エリアだ。住宅以外にも、ベーカリーや自然食品店、チーズ工房、共有キッチン、子どもたちの遊び場などがあり、また来客用のキャンピングエリアや、パーマカルチャーの研修に使われるエコセンターもある。上下水道がないため、飲料水やシャワーは自分で雨水をろ過する必要があり、雨水タンクの設置が義務付けられている。オーストラリアの手つかずの自然やコミュニティの魅力に惹かれ、多世代、多国籍の人びとが集まっている。ひとりが購入できるのは1区画のみ。

20201016_8.jpg
ABRA144/ブラジル
(人口:約11人/面積: 2.7㎢)

ABRAとは、「Amazonian Bio-Regional Village」の略。「バイオリージョナリズム(生態地域主義)」を基本理念にし、アマゾンの原生林のなか、地域全体を使う環境学習コミュニティだ。土地の90%は手つかずの原生林が占めている。メンバーは有機農業や養蜂に取り組み、また生態学や自然と調和する建築やエコツーリズムなどの活動を行なっている。その収入の一部がコミュニティに還元され、電力や道路、インターネットなどのインフラ整備へ投資されている。

20201016_9.jpg
オタマテア・エコビレッジ/ニュージーランド
(人口:約 30人/面積:1.02㎢)

クイーンズランド州・カイワカにあるエコヴィレッジ。1995年に夫婦で立ち上げられ、セルフビルドの建築や風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーのみを利用した電力システムが特徴的。ルールやリーダーをあえてつくらず、多分野のバックグラウンドをもつメンバーが役割を分担して暮らしている。ニュージーランドの原生植物や樹木の再生に力を入れており、あるがままの大自然のなか昔ながらの生活を体感できるところが大きな魅力。ウーフ(住み込みの農業体験。ホストが食事と宿泊場所、農業体験を提供してくれる代わりに、学び、「力」を提供してホストを助ける制度)も受け入れている。

20201016_10.jpeg
ウェウェコヨトル/メキシコ
(人口:約 20人/面積: 0.06平方キロメートル)

モレロス州ポストランに位置するエコビレッジ。「エコロジーは芸術」という理念のもと、芸術家や社会活動家が創設した。糞尿を含め、有機廃棄物はコンポストにして農地の肥料となり、また水洗式トイレを使わないことで水の使用量を削減している。また、雨水や近くの滝の水を生活用水にし、効率的な水循環システムを構築している。さらに、電力は太陽光発電でチャージ。人間も、森の生態系の一部となって暮らしている。


――――――――――――――


都市としてルールや計画のある大きな仕組みの中で暮らすことと、コミュニティとして小さな規模で生態系と調和しながら暮らすという、ふたつの角度から紹介した。アプローチの仕方は違えど、環境負荷を少なくするという点では共通している暮らし方。一部でも私たちの暮らしに取り入れられることがあるかもしれない。

お詫びと訂正