冬に食べたい中国の養生食とツボ
【世界の癒やし】

COLUMN | 2021.01.19

20201223_1_3.jpg©︎中岑范姜
 
中国では、東洋医学の考えに則り心身をケアする「養生」が古くから親しまれている。今回は、この季節に覚えておきたい具体的な養生の実践方法として、食材や身体のツボを紹介しよう。
 
 
■冬の養生
 
さて、今回は冬の養生について細かく解説していくが、冬という季節はどんな季節なのか。東洋医学では「収蔵」といって生命のエネルギーが足元の方へしまわれる季節だという。春への準備の季節である冬は、もっとも疲れやすく、エネルギーを損ないやすいため、基本的には静かに過ごし、養生することが必須だ。
しかし、一言で冬といっても、「冬至」の前か後かで養生法は異なる。
 
・立冬(11月7日頃)から冬至(12月21日頃)
この時期は呼吸器系のトラブル(咳や痰など)、鼻の疾患、皮膚の疾患などがある人は、冬にもかかわらず秋の症状がまだ出ている可能性がある。活動量を抑え、着衣量を増やして暖かくすることが大切。
 
2000年前の世界最古の医学書「黄帝内経」にも着衣に関する記述があり、ポイントは「薄着が好きといっても震えるほどではいけない、厚着を好むといっても汗をかくほどでもいけない」。汗をかかないことが基本だ。
 
また、食べ物に関しては、白い食材と黒い食材をよくとること。大根、白菜、カブ、レンコン、シラタキなど白い食材には呼吸器、鼻、皮膚などを沈静する作用がある。ヒジキ、黒豆、昆布、ワカメ、黒米、ブルーベリーなどの黒い食材は、冬の主力である五臓の「腎」のパワーを滋養する。
 
・冬至(12月21日頃)から立春(2月4日)にかけて
冬至からの1カ月半が1年でもっとも寒く、体を整えることにもっとも注力すべき養生の本番となる。陰がもっとも極まるこの時期は、黒い食材に加えて、薔薇茶、りんご、ビーツ、小豆やさつまいもなど、「陽」の象徴である「赤」を取り入れるのがよい。また、下記の食材などがとくにおすすめだ。
 
 
【天然の点滴、はちみつ】
 
紀元前後頃(約2000年前)に書かれた世界最古の薬学書といわれる「神農本草経」のなかで、「(はちみつは)よくあまたの病を取り除き、百薬と調和する。これを長期間服すると志を強くし、段々と身の動きが軽くなり、飢えに苦しむこともなく、年齢においても老いさらばえることがない」と言及されている。
 
漢方薬にも使われており、便秘に「蜜煎薬」、火傷に「蜜膏」、失音に「通音煎」などが服用される。また、生理前のむくみや、加齢性の便秘にも効果が高い。お湯に溶いて飲むほか、ゆずや生姜とシロップなどにしてお湯割りにすると、最強の風邪予防ドリンクに。
 
広東省では民間療法として、秋の終わりに家族みんなで漢方薬と蜂蜜などを混ぜて、特別な漢方蜂蜜を作る風習がある。この時、家族全員が素手で混ぜ、家族のもっている免疫力を共有するそうだ。
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【喉の滋養と咳予防になるかりん】
 
中国原産のバラ科の植物であるかりんは、日本でも1100年前に弘法大師が苗を持ち帰ったとされ、古くから薬用として重宝されてきた。かぐわしい香りだが、生では食べられず甘露煮やジャムにするのがよい。喉や咳、喘息、風邪など感染症の予防に効果がある。
20201223_1_5.jpg©︎Takashi Kosaka
 
 
【最高の養生食、鹿肉】
 
肉のなかでもジビエは、野山を駆け回り、大空をはばたく動物たちのパワーに満ちており、冬の弱った体を養生する。どんぐりなど木の実や豆類を好んで食べる鹿の肉は、人間にとって良質なタンパク質だ。ローストした鹿肉やシチュー、ワイン煮などがおすすめで、体があたたまり、元気が出てくる。
 
中国では、鹿肉は女性ホルモンを増やすため女性にとってよいとされ、また男性にはロクショウという鹿の角が滋養強壮に効くと考えられている。ロクショウは心機能の改善や腎機能、筋肉の疲労回復に効く漢方薬で、皇帝や貴族にも重用されたという。
日本では害獣のイメージが強いが、中国では「養鹿(ようろく)」という鹿の飼育が清の時代(1773年〜)からつづいている。
 
 
■症状別 不調に効くツボ。
 
また、冬の不調に効くツボも紹介する。指などで押したり揉んだりするだけでもよいが、台座灸などを使ってセルフお灸をするとさらに効果的だ。
 
*火の取り扱いや、皮膚や体調への影響などはご自身の責任で行ってください。
 
・足の冷え「八風穴(はっぷうけつ)」
足の指の間にあるツボ。足の親指の内側に手の親指を添えて、人差し指から小指へと順番に、足の指の間に指をいれ、両脇からしめていく。
 
・風邪の予防「大椎穴(だいついけつ)」
ぶるっと震えがきて風邪をひきそうなときには、「大椎穴」にドライヤーを当てるのがおすすめ。大椎穴は、首を前に曲げると首と背中の付け根に飛び出る椎骨下部の凹みの部分。ここを中心にカイロを貼っても良い。
 
・腹痛「足三里穴(あしさんりけつ)」
 
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腹痛の原因はさまざまだが、「足三里」は万能ツボ。膝の骨の外側の下端から3寸(指をそろえて4本分の幅、個人差があり約6~8cm程度)さがったところにある。東洋医学では、冬の代表的な風邪の症状で急性の腹痛を伴うものを「直中(じきちゅう)」といい、冷たい空気が直接体内に侵入することによって起こり、発症直後から腹痛・嘔吐・下痢などの症状が出て、四肢が冷たくなるという特徴がある。このような場合にも足千里は効き、さらに湯たんぽなどでふくらはぎやお腹を温めるのもおすすめ。
 
・鬱っぽい、ストレス過多
「神門穴(しんもんけつ)」「合谷穴(ごうこくけつ)」「内関穴(ないかんけつ)」
 
太陽の光が少ない冬は、パワーが減退してやる気が落ち気味に。新型コロナウイルスの影響で、気分が塞ぎがちになったりストレスを感じて体調を崩している人もいるのでは。脈をとってみて、早いようであれば「内関穴」、ゆっくりのようなら「神門穴」が効く。たくさん寝てしまってやる気が出ない、引きこもってしまいがちなど、冬は副交感神経系の鬱が増える傾向にあり、これに効くのが「合谷穴」。さらに合谷穴は顔面の症状全般に効果があり、顔色をよくしたり、花粉症を緩和したりする効果もある。
 
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*神門穴...小指から手のひら側に下った線と手首のシワとの交差点。
 
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*合谷穴...手の甲側。人差し指と親指が合流するところから、少し人差し指のほうへあがったくぼみ。押すと痺れるような痛みを感じる。
 
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*内関穴...手のひらを上にし、手首のしわから指三本分さがったところ。二本の筋の間で、押すと痛みを感じる。
 
季節が移ろうにつれて、変化していく心と体。東洋医学式で冬という季節を捉えてみると、多くの発見がありそうだ。食事やツボなど、気軽に実践できることから試してみよう。
 
 



 
 
監修=鈴木知世
すずき・ちせ●仁愛中国鍼灸院院長。同院は20年以上続く鍼灸院で、年間3500名程度が全国より訪れる。2014年に二代目院長となる前は、米国にて医療財団の法人の事務局長も兼任しながら、邦人向けクリニックに勤務。その間、中国広東省にある総合病院へ出向し、邦人向けのプロデューサー・通訳を務める。世界でもめずらしい西洋医学と東洋医学の利点を掛け合わした「中西結合医療」を目の当たりにしてその必要性を感じ、治療家を志ざし、鍼灸師の資格を取得した。
 
 
text=ANNA HASHIMOTO
 
 

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