国によって意味が変わる
世界の青図鑑
【ブルーに恋して!】

COLUMN | 2021.03.12

前回の記事で日本の青について知ったところで、今度は視野を世界に広げてみる。世界にはどんな青が存在し、それぞれの地域でどのような意味をもってきたのか。世界の青の豆知識とともに、14の国や地域における青を紹介する。
  
 
①イギリス
 
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©shutterstock
 
王室のロイヤルブルー、イギリス最高位の勲章・ブルーリボンなど、イギリスにとって青は特別な色。古代ローマ人がイギリスに攻め入った際、先住のケルト人たちが体を青く塗って戦いに挑んだことから、「ブルーの人」が転じてブリティッシュになったという説も。

 
②フランス
 
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©National Gallery of Art, Washington
 
4世紀にガリア(のちのフランス一帯を含む地域)でキリスト教の布教をした聖マルタンが青い外套を纏っていたことから、フランスを象徴する色に。12世紀以降には王家が青地に金の百合の紋章を使用、14世紀にはシャルル4世が青を国王の色とした。
 

 
③スペイン
 
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©myartprints.co.uk
 
「貴族または名門の血統」を意味する「ブルーブラッド」という言葉は、スペインで生まれた言い回し。かつてレコンキスタで、褐色の肌をしたアラブ勢たちに抵抗した白人たちの血管が青く見えたことからきている。
 
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〜世界の青トリビア その1〜
  
青は蔑まれた色だった?
  
古代の西ヨーロッパにおいて、青は蛮族と結びつけられ、卑しい色とされていた。しかし12世紀初頭には聖母への信仰の高まりとともに、マリアの象徴色である青の人気が上昇。その後、ヨーロッパの王家の色に採り入れられると、高貴な色として認識されるようになっていった。

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④オランダ
 
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©Sandra van der Steen
 
もともと陶器の街だったデルフト。17世紀に入ってオランダ東インド会社から日本や中国の陶磁器が伝わり、この地で欧州初の青絵の陶磁器が生産された。その染付の鮮やかな濃紺から「デルフトブルー」という色名が生まれた。
 
⑤ポルトガル
 
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©r2hox
 
ポルトガル語で「青」をアズール(Azul)といい、街には青の染付けで幾何学模様や神話が施されたアズレージョ(Azulejo)と呼ばれる装飾タイルで彩られた建物が溢れている。
 
⑥モロッコ
 
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©shutterstock 
 
リフ山脈にあるシャウエンや港湾都市エッサウィラなど、モロッコには建物が青く塗られた街がある。虫除けのため、住人の一人が塗りはじめたため、移り住んだユダヤ人が青を好んだため......など諸説あり。
 
⑦エジプト
 
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©Metropolitan Museum of Art
 
青の顔料となるラピスラズリの鉱脈がなかったエジプト。それでも古代エジプト人は青を求め、紀元前3000年頃、石英とアルカリを加えた銅化合物で人類最古の合成顔料といわれているアレキサンドリアブルーを生み出した。
 

 
⑧ウズベキスタン
 
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©Andrea Kirkby
 
 
青は中央アジアを故郷とするトルコ系遊牧民の伝統色。ウズベキスタンでは国旗に使われ、またかつてシルクロードの要衝として栄えたサマルカンドは、青を基調としたイスラーム建築が並び、「青の都」と呼ばれる。
 
 
⑨ロシア
 
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©Dmitry Djouce
 
ロシア国旗は青、白、赤の3色。青は皇帝と小ロシア(ウクライナ)人、白は白ロシア(ベラルーシ)人、赤は人民と大ロシア(ロシア)人を意味するといわれる。またロシアでは「空色」は男性の同性愛を表す色でもある。
  
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〜世界の青トリビア その2〜
 
緯度によって青の見え方は違う
 
土地の緯度によって太陽光の色温度は異なり、物の見え方に影響を及ぼす。高緯度の地域では太陽光線が青みがかり、低緯度の地域では赤みが強い。つまり緯度の高い北欧などでは、青が日本と比較してより鮮やかに見える傾向があり、寒色系が好まれる。

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⑩タイ
 
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©Royal Collection Trust
 
タイの国旗の色は青、白、赤の3色。青は現在の国旗を制定したラーマ6世の色からとっている。タイでは曜日によって色彩が定められており、ラーマ6世が金曜日生まれで、金曜日の色が青だったことに由来している。
 

 
⑪インド
 
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©madelinewu
 
世界でもっとも古くから藍染めをしていたといわれるインド。グレコ・ローマン期(紀元前4世紀~紀元4世紀頃)以降、欧州はインドから藍を仕入れていた。藍色染料「インディゴ」という名前も、インドから名付けられた。
 
⑫アメリカ
  
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©Library of Congress
 
青は南北戦争における北軍兵士の色であり、同時に奴隷解放のシンボルの色となった。西部開拓時代の騎兵隊の軍服の色にも採用された。民主党の政党色も青。
 

 
⑬ネイティブアメリカン
 
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©Joseph Sohm
  
アメリカの先住民であるホピの文化では、青は死の館がある西方と紐づけられている。儀式の際にホピの民が使う青い羽(ワシの羽)をもつ精霊が訪れる夢は、悪いことの起こる前兆とされている。

 
 
⑭グアテマラ、メキシコ
 
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©Constantino Reyes
 
空色を思わせる鮮やかな鉱物顔料で彩られた「マヤブルー」。かつてグアテマラやメキシコに栄えたマヤ文明を象徴する色だが、マヤ滅亡によってその製法は不明となった。高貴な色として神殿の壁面や神像を彩るのに使われていた。


⑮アフリカ北部

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©shutterstock
 
この地域ではインディゴ染めが好まれ、多くの布が藍色で染められる。 とくにサハラ砂漠の遊牧の民であるトゥアレグは体全体を真っ青な布で覆うことから「青の民」と呼ばれる。


  
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〜世界の青トリビア その3〜
 
青という概念のない地域も 
 
ニューギニアのジャレの民は、白と黒の2色の色彩語しかもたない。中央アフリカのンデンブの民も、白、黒、赤の3色を基本的な色彩としている。ただしこれは青が見えないということではなく、青をほかの色と区別する概念をもたないということを意味する。

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早渕智之=文
橋本実千代=監修 


  *この記事は、TRANSIT50号「美しき日本の青をめぐる旅」からの転載です。 日本の青についてもっと知りたい方はこちらへ!             


お詫びと訂正