東京の未来を考えるキーパーソン
多様な性を尊重する社会へ
山田なつみさん・杉山文野さん
【51号 東京を時空旅行!】

COLUMN | 2021.04.20

約1400万人もの人口を誇る巨大都市・東京。
  
多くの人が暮らしているからこそ、多様な個性や暮らしのかたちがあり、それゆえの課題や衝突も生まれています。
  
今、そのような問題を解決し、誰にとっても心地よい東京を実現するため、 声を上げている人びとがいます。
 
現在発売中の『TRANSIT51号 東京 江戸から未来へ時空旅行!』では、東京の明るい未来を実現すべく、課題解決に取り組む方々に話を伺いました。
   
LGBTQのパレードを主催するNPO法人「東京レインボープライド」の代表理事を務める、山田なつみさんと杉山文野さんのお話の一部を、抜粋してご紹介。
 




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左:やまだ・なつみ ● 2012 年に初めてボランティアスタッフとしてレインボープライドに参加。翌2013年より同団体の運営スタッフとして活動を開始し、2019年10月に共同代表理事に就任した。ふだんは会社員として働いている。
 
右:すぎやま・ふみの● フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程終了。 日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定にかかわり、渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員も務める。現在は父として子育てにも 奮闘中。
 
  
 
人びとの意識を変え
平等な社会の実現に向けたパレード
 
20210420.jpgカラフルなフラッグやメッセージボードを掲げたパレードは、渋谷~原宿エリアで実施。(新型コロナ以前)
 

渋谷区に日本初となる同性パートナーシップ条例が設けられたのが2015年。オリンピックの開催も影響し、2019年には東京都にLGBTQの差別を禁止する条例ができた。
 
こうした東京の人や社会の変化に一役買っているのが、毎年開催されるプライドパレードの存在。
 
現在ではセクシュアル・マイノリティのパレードを指すものとして広く国際的に認知されており、東京では、LGBTQ関連イベント「東京レインボープライド」のメインイベントとして開催している。
 
ニューヨークがルーツで、日本では1994年に初開催し、2012年からはNPO法人東京レインボープライド(以下TRP)が「らしく、たのしく、ほこらしく」をモットーに主催している。
 
「私たちの最初のミッションは、多様な性が存在するということを可視化し、理解を促進するところから始まりました」
 
そう話すのは、同団体の代表を務める杉山文野さんと山田なつみさん。山田さんは、パレードの企画・運営を通して、年々変化を実感しているという。
 
「LGBTQのパレードではありますが、今では当事者ではない方も大勢参加しています。『自分らしく生きることの大切さを感じた』『多様な人がいる社会のよさを子どもに伝えたいと思った』といった声を聞くと素直に嬉しいですね。協賛してくれる企業や団体も増えてきました」

 210417_transit51.jpgTRANSIT51号の誌面
 
 
LGBTQかどうかということではなく、誰もが自分らしく生きていける世界であってほしい。
そんな理念が共感を呼び、初年4500人だった参加者は、2019年にはTRP史初の1万人を超え、 同イベント全体では40倍以上となる約20万人に増加した。
 
そして今、TRPのミッションは可視化から"課題解決"のフェーズに移り変わってきていると、杉山さんは話す。
 
「LGBTQ、多様性という言葉はこの数年間で浸透しましたが、実際にルールや社会が変わるまでにはまだ至っていないと思っています。ルールや制度は万人に平等なものとされているけれど、実際は、結婚できる人とできない人がいるのが現実。差別的な構造が社会に組み込まれてしまってはさまざまな痛みはなくならない」
 
ダイバーシティは徐々に広がってはいるが、国レベルで同性パートナーの法的保障がないのはG7のなかでは日本のみだ。
 
婚姻の平等がないこと、夫婦と同じ保障が受けられないことで、生きやすさや暮らしやすさを求めて日本を離れてしまう当事者も少なくない。また、福利厚生が異性間カップルにしかないことや、就職がしづらいなど、日常生活を送る上でハードルが高いと感じる場面はまだまだ多い。
 
それらを解消するには、法律を変える必要があるという。
 
「パレードをするだけでは法律は変わりません。でも法律や制度、自分自身の世界を変えるのは私たち一人ひとりの行動だと思っています。それを意識したり、行動したりするきっかけを作っていけるようなイベント、プライドパレードにしていきたいと思っています」(杉山さん)
  
そんな2021年の東京レインボープライドは 、前年同様オンラインで開催することが決定している。
 
これまでのように街に出て自己アピールすることは叶わないが、前回はこれまで以上に全国各地の人びとと繫がれたと実感したという。
 
「誰もがハッピーになれる社会を作りたい。それぞれハッピーの形は違うと思うから、意見を押し付け合うのではなくて、尊重し合えるような関係が理想です」(杉山さん)
 
「パレードに参加して声をあげているとき、『自分らしく生きている』と実感できます。それがパ レード以外の瞬間もずっとつづいて、誰もが安心して暮らせるような日が来るように活動をつづけていきます」(山田さん)
 
自由で柔軟な社会を目指し、東京から日本をさらに前へと進めていく。


text=MISAKO TATEOKA


210405_05.jpg 『TRANSIT51号 東京』はこのほかにも東京の歴史・現在・未来について深く知る企画が詰まっています。 時代に想いを馳せて、多層な東京の街を散策してみませんか?  


お詫びと訂正