明治・大正を感じる東京散歩
モダン建築のススメ
【51号 東京を時空旅行!】

COLUMN | 2021.04.27

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©️Takeshi Miyamoto


外国に門戸を閉ざしていた江戸時代から、一気に西洋化が進んだ明治・大正時代へ。外国への憧れ、めまぐるしく移行する社会や暮らしへの高揚感にあふれたこの時代、東京の風景も華麗に変身していく。池袋、護国寺、日比谷、丸の内から銀座へ。洗練された優美なモダン建築を巡って。
 
 
最初に向かったのは、池袋にある〈自由学園 明日館〉。アメリカが生んだ建築界の巨匠、フランク・ロイド・ライトの設計で、1921年(大正10年)に完成した。
 
もとは羽仁吉一、もと子夫妻が設立した女学校であり、「簡素な外形のなかにすぐれた思いを充たしめたい」という思いが込められている。幾何学模様をした木製の窓枠や桟、庭に広がる草原、食堂を中心に据えた全体設計などが特徴だ。ちなみに明日館の設計は、ライトが〈帝国ホテル〉に取り組むのと同時期に行われたといわれる。   
 
 
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©️Froschmann
自由学園 明日館

 
 
〈自由学園 明日館〉
東京都豊島区西池袋2-31-3
休館日:毎週月曜(月曜が祝日または振替休日の場合はその翌日)、年末年始
*見学についての詳細はこちら

 
 
 
外国人建築家につづき、次は日本の名匠が造った場所へ。護国寺の〈鳩山会館〉は大正・昭和初期に活躍した岡田信一郎によるイギリス風洋館。1924年(大正13年)に完成した。
 
戦後内閣総理大臣を務めた鳩山一郎の私邸であり、日本初のステンドグラス作家である小川三知の和風ステンドグラスや、サンルームのモザイクパターンのタイルなど、細かな意匠にエレガントな雰囲気が感じられる。
 
 
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©️wakanmuri
鳩山会館

 
 
〈鳩山会館〉
東京都文京区音羽1-7-1
休館日:月曜日(但し、祝日の月曜は開館し、翌日休館)
開館時間:10:00~16:00
*1、2、8月は資料整理、修繕のため休館。
*入館は15:30まで。
*入館料についての詳細はこちら

 
 
 
お腹が空いてきたところで日比谷の〈日比谷 松本楼〉に移動。1903年(明治36年)にオープンした森の中にある歴史的な建物は、まさに都会のオアシス。日本初の洋式公園として誕生した日比谷公園内に佇む。当時のファッショニスタ「モガ(モダンガール)」の間では「松本楼でカレーを食べてコーヒーを飲む」ことが大流行したというので、名物の「ハイカラビーフカレー」を食べることにしよう。
 
松本楼は夏目漱石をはじめとする文人たちの憩いの場であり、彼らが書く小説の舞台でもあった。さらには日比谷という土地柄上、バルコニーが憲政擁護運動の演説場となったなど、激動の近代の記憶が染み付いている場所ともいえる。
 
 
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©️jun560
日比谷松本楼

 
 
〈日比谷 松本楼〉
東京都千代田区日比谷公園1-2
営業時間:11:00~21:00(ラストオーダー 20:00)
*営業時間の詳細はHPをご確認ください。

 
 
 
お腹を満たしたら、歩いて〈東京駅〉へ。東京の玄関口として1914年(大正3年)に開業し、2012年には当時の姿を忠実に再現する復元工事が終わり、リニューアルオープンした。設計は、日本近代建築のパイオニアである辰野金吾。鉄骨レンガ造りの3階建て、ヨーロッパスタイルのホテルを備えた壮麗な建物でありつつ、非常に堅牢で関東大震災にも耐え抜いた。
 
丸の内駅舎の八角形のドーム天井には、8羽の鷲と8つの干支のレリーフが。足りない4つの干支(子、卯、午、酉)は、辰野の故郷・佐賀県で彼自身が手がけた〈武雄温泉楼門〉にて、レリーフが見つかっている。
 
 
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©️Takeshi Miyamoto
 
 
東京駅から少し離れるが、日本橋には同じく辰野建築である〈日本銀行本店〉もある。欧米の銀行視察のあと、ロンドンで設計の原案が作られたそうだ。
 
6個の千両箱の上で咆哮する2匹の雄獅子が日本銀行のマークを抱えた青銅製のエンブレムや、ルネサンス様式の意匠が採り入れられた重厚な壁面などは、視察の影響を受けている。東京駅と合わせて、訪ねてみるのもよさそうだ。
 
 
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©️takuhitofujita
日本銀行本店

 
 
〈東京駅〉
東京都千代田区丸の内1丁目
 
 
〈日本銀行本店〉
東京都中央区日本橋本石町2-1-1
見学日:毎週月曜日~金曜日(ただし、祝日、年末年始<12月29日~1月4日>を除く)
*日本銀行の業務等の事情により、見学案内を実施しない場合あり。
見学料:無料
*見学時間や定員などはこちら。

 
 
 
東京駅近くには、ほかにも近代の面影の残る建築が。〈三菱一号館美術館〉は、1894年(明治27年)にイギリス人建築家のジョサイア・コンドルの設計で建てられた、丸の内初のオフィスビル「三菱一号館」を復元した建物。ちなみにジョサイア・コンドルは工部大学校(現在の東京大学工学部)の建築学教授として来日していて、日本近代建築の創成期の建築家を育てたことでも知られ、彼の教え子には辰野金吾もいた。
 
全館に19世紀後半の英国で流行したクイーン・アン様式が用いられた上品な造りで、中庭には豊かな植栽があり、都会のど真ん中ということを忘れてしまうほど落ち着く空間だ。
 
 
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©️jun560
三菱一号館美術館

 
 
〈三菱一号館美術館〉
東京都千代田区丸の内2-6-2
開館時間:10:00~18:00(入館は閉館時間の30分前まで)
*祝日・振替休日除く金曜、第2水曜、展覧会会期中の最終週平日は21:00まで
*臨時の時間変更の場合あり
休館日:毎週月曜(祝日・振替休日・展覧会会期中最終週の場合は開館)年末、元旦、展示替え期間
*臨時の開館・休館の場合あり
入館料:展覧会により異なる

 
 
 
さて、最後は銀座の〈資生堂パーラー〉にて締め。1902年(明治35年)、資生堂薬局内で飲み物を提供する「ソーダファウンテン」としてはじまり、その後、日本初のソーダ水と当時はまだ珍しかったアイスクリームを組み合わせた「アイスクリームソーダ」を提供して、流行させた。119年つづく伝統のソーダ水に自家製アイスクリームを浮かべたこのメニューは、今も健在。

当時の建物はもう残っていないのだが、スペイン出身の世界的な建築家リカルド・ボフィルによる設計で2001年に開館した現在の建物には、かつての「銀座レンガ街」を彷彿とさせる赤煉瓦が使われている。銀座では1872年に大火事が起こり、その後は木造から燃えにくい煉瓦造りの街並みへと変わっていったという歴史があるのだ。
 
 
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©️Takayuki Miki
資生堂パーラー銀座本店

 
 
〈資生堂パーラー〉
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル1F
営業時間:11:00~21:00
定休日:年末年始

 
 
 
銀座のショーウィンドウを眺めながら街を歩いていると、建築も、ファッションも、食べ物も、あれもこれももとは西洋文化であり、明治・大正期に日本にやってきたものなのだとハッとさせられる。建築や街並みから、わずか40年ほどで西洋化を遂げた日本、東京の姿を垣間見ることができる。

東京についてさらに知りたくなったら、TRANSIT東京号も合わせてどうぞ。

text=Anna Hashimoto 
 
 
▼今回紹介したスポットをマップにまとめました。

 
 
 
*施設の営業日や営業時間は、HPをご覧いただくなどして各自ご確認ください。

 
 


お詫びと訂正