<TRANSIT VOICE 旅するポッドキャスト>
第12回のテーマは「旅を読む 旅を書く」

VOICE | 2021.05.19

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<Spotify>オリジナル・ポッドキャストシリーズ「#聴くマガジン」の『TRANSIT VOICE 〜旅するポッドキャスト〜』。そして今回が最終回!5月20日配信回のゲストは、編集者の井出幸亮さんです。





移動が制限され、いつでもどこにでも行けた自由を恋しく思う日々がつづきます。そしてその自由な未来は、まだ遠いようですね。


だから最終回は「旅の本」の話をしましょう。ゲストは、さまざまな媒体で世界各国を旅し、旅について書き、本の造詣も深い編集者の井出幸亮さんです。



今回話題に出た本はこちら。
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まず1冊目は、井出さん自身と写真家・石塚元太良さんとの共著である
『アラスカへ行きたい Almost ALL ABOUT ALASKA』石塚元太良・井出幸亮共著(新潮社)から。


パイプラインや氷河、ゴールドラッシュなど、多くの作品をアラスカで撮影しているアラスカのエキスパートこと石塚元太良さんと、自身もたびたび訪れていた井出さんの、ふたりならではのガイドブック。ガイドブックといえど、歴史や文化、先住民のこと、食のこと、生き物のこと、そこに住む人たちのこと......写真やイラスト、またたっぷりのコラムは、ジェネラルな情報ではなく極私的な視点で編集されたもの。だからでしょうか、この本を読めばたちまちアラスカへ行きたくなり、そして自分だけのアラスカを見つけて、ふたりに共有したくなるのです。


そのガイドブックの参考にもなったという『旅する21世紀ブック・望遠郷シリーズ』ガリマール社(同朋舎出版)。フランスのガリマール社のガイドシリーズで、情報よりも歴史や文化が豊富な図版とともに紹介されています。とにかく情報量がすごい。まるで国の図鑑! もう絶版となってしまっていますが、いろいろな国・都市を収集したくなります。


伝説の編集者、北山耕平さんと長野真さんの共著『湘南 最後の夢の土地』(冬樹社 *絶版)も、その土地を"雑誌的に"紹介しているガイド本の一つとして紹介してくれました。『旅は犬づれ?』上中巻 磯貝浩著(清水弘文堂 *絶版)は、アラスカの本を探しているなかで見つけたということですが、ふしぎなことに下巻がない。元ヒッピーでヒッチハイカー、編集者である著者が、息子と旅に出たときの実録紀行です。


井出さんが何度も読み返すという『ティンカー・クリークのほとりで』アニー・ディラード著、金坂留美子・くぼたのぞみ訳(めるくまーる出版 *絶版)。都会を離れ、ヴァージニア州の大自然のなかで暮らした著者の随筆です。自然とは決して静寂なものではなく、生命力に満ちたものであるということを、じつに豊穣でクリエイティブにあらわした文章だと、何度読みかえしても驚くとか。


自然への旅というテーマで菅原が紹介した旅の本は、『新しい目の旅立ち』プラーブダー・ユン著、福冨渉訳(ゲンロン叢書)




タイ現代カルチャーの寵児、プラーブダー・ユン氏の、紀行文というよりは哲学エッセイです。"自分に飽きてしまった"彼が、慣れきった思想から抜け出すべく、フィリピンの「黒魔術の島」と呼ばれるシキホール島へ向かう。何かから逃げている、という思いを抱えながら都市に帰る自分に気づくとき、新しい目を持つことになる......というもの。深く自分に潜っていく思考の旅の軌跡は、とても濃密な読書体験です。


俳優の岸田今日子さんが、1980年代にインドやイギリス、チェコや香港などのさまざまな国を"遠足"したときのことを書いたエッセイ集『外国遠足日記帖』(文藝春秋 *絶版)も。海外への不安や世界への好奇心を、素直に表現した一冊です。


そして、井出さんのおすすめが、素九鬼子さんが書いた『旅の重さ』(筑摩書房 *絶版)。こちらは作品自体のみずみずしさもありますが、とくに出版のエピソードが面白い。ぜひポッドキャストでお聴きください。


素九鬼子さんの、旅にまつわる作品で現在も購入できるのが『砂漠 アルチュール・ランボーへの旅』素九鬼子著(幻冬舎ルネッサンス新社)。こちらもまた、独特の文体にうっとりする放浪記です。




「旅の本」が教えてくれるのは、遠くに行かなくても、どこにも行かなくても、フレッシュな視点やアンテナをもってさえいれば私たちは新しい場所に行けるということ。


そして一冊の本からまた別の場所へと世界がどんどん広がってゆく、「本の旅」もあるということ。


今回紹介した本には、現在書店で手に入らないものが多いですが、興味をもった本がありましたら、ぜひ図書館や中古書店なども利用して探してみてください。



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井出さんが編集長を務める大判のカルチャーマガジン Subsequence は7月に出版予定とのこと。こちらも期待しています。


さて、半年の間にわたってご愛聴いただいたみなさま、どうもありがとうございました。
多岐にわたる旅のプロを12名もお招きしましたが、世界の多様でカラフルな価値観を、番組をとおして感じてもらえたらうれしいです。


その土地や文化へのリスペクトがあれば、どんな旅をしたっていい。自分の目で見て感じること、そして旅で感じる驚きをひとつひとつ大切にしたいですね。


はやくまた、自由に行きたい場所に行ける日がきますように。それまでは、本の旅を楽しみたいと思います。


また新たなかたちでお会いしましょう。


ご意見や感想なども「#TRANSITVOICE」のハッシュタグでお寄せいただけたらうれしいです


お詫びと訂正