京都ってなんだ? ー歴史編ー
地形からたどる首都・京都の1000年
【52号 小さな京都の物語を旅して】

Info | 2021.06.29

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794年の平安京遷都から1000年にわたり、政治・宗教・文化の中心地であった京都。日本中を探しても、京都ほど大胆に姿形を変えてきた都市はほかに類をみない。


「TRANSIT52号 小さな京都の物語を旅して」では、京都高低差崖会会長の梅林秀行さんが、かつてこの国の首都でありつづけた京都の姿を、地形の謎を紐解きながら解説。


今回はその一部をご紹介します。




権力者によって変えられた京都の平地


京都の出発点は、もちろん794年の平安京遷都にはじまる。
桓武天皇がそれまで奈良盆地に置かれていた都を京都盆地に移した理由として、豊富な水資源など環境の利便性が挙げられる一方、新王朝樹立に向けた人心一新の意図も指摘されている。ともかく桓武天皇は、これまでにない大都市を造営し、古代宮都の完成形をついに実現したのだ。しかし、平安京はその後の歴史で、幾度も転生を繰り返すことになる。


最初の変化は古代から中世への移行期。市街地は平安京の外に向かって拡大した。摂関期・藤原道長の「法成寺」を皮切りに、「白河」、「六波羅」など、 平安京の外部ではフリーハンドの政治が可能と考えたのか、ニューカマーの権力者による下新京市街地が次々と生まれた。


次の変化は戦国時代。
応仁の乱後の混乱のなかで極端なまでに市街地が縮小した。京都の一体性は失われ、「上京」と「下京」という武装した小集落に分裂したのだ。戦国時代に、私たちが知る京都という都市は存在しなかったと思ってよいだろう。


そして次の時代、大きな変化が訪れた。豊臣秀吉の「京都改造」である。近世という新時代を拓いた秀吉は、戦国時代に分裂した市街地を再統合するように、京都を全長約22kmの城壁・堀「御土居(おどい)」で囲んだ。現代の京都は、この秀吉の京都改造を原形としている。


ここからは、図を見ながら京都の町並みの変遷を見てみよう。




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〈 平安京の誕生 〉 800年頃
桓武天皇が夢見た永遠の都


「新王朝」樹立を意識した桓武天皇にとっ て、新都の建設は記念碑的な大事業だった 。淀 川水系の豊かな水資源を背景に 、宅地と道路の一体的な設計や寺院規制を行うなど 、平安京は古代宮都の完成形といえるかつてない大規模なものだった。一方、古代日本にとって平 安 京の規模はオーバースペックでもあり、市街地の西半部(右京) は次第に耕地化し、都の中軸線だった朱雀大路も荒れ野や墓場となっていった。


 

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〈 副都心の勃興 〉 1000~1200年頃
時の支配者・藤原氏が自分のムラをつくる


中世になると、桓武天皇が意図した市街地の範囲を越えて、副都心ともいえる新たな市街地が平安京の外部に続々と生まれた。 法成寺のあった鴨川西岸や、現在の岡崎の地にあたる白河、六波羅蜜寺のある一帯の六波羅など鴨川東岸は 、さまざまな権力者が独自に建 設した新市街地である。公家・ 武家・寺社など権力が多元化していった中世社会は、都のあり方も複数の核からなる多元的な都市に変えていったのだ。
 

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〈 応仁の乱後に縮小 〉 1500~1580年頃
京都の町が2つに分裂!?
 

応仁の乱で荒廃御し、一体性を失った京都は、「上京」と「下京」という二つの小集落に分裂し、外敵を自力で迎撃できる城郭都市に変貌していた。戦国の世ならではの首都のあり方である。一方で堀と城壁で囲まれた市街地の中では、祇園 祭などの祭礼が盛大に催されて、今につながる京都住民のアイデンティティが生まれはじめていた。たとえば「町」という都市単位も、この時期の京都が起源と考えられている。

 
 
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〈 秀吉の再開発 〉 1590年頃
現代の街並みをつくった秀吉
 

「御土居」の建設や寺院を集めた「寺町」の設置など、秀吉の「京都改造」は、戦国の世をへた新たな社会への実験だったのかもしれない。町の区画を平安京以来の正方形から長方形へ変更したことも重要で、道路が効率的に配置された都市計画が実現した。そして秀吉が京都で実践したこれらの都市計画は、その後、日本中の城下町が採用していった。秀吉発の「近世京都」は、日本各地のモデル都市とされたのだ。

1000年以上首都でありつづけ、各時代の社会変化に伴うインパクトをまともに受けながら、姿形を大きく変えてきた京都。時代ごとに膨らんだり萎んだりする都の地形の変遷をたどれば、時の権力者によるさまざまな思惑が見てとれよう。




text=梅林秀行(うめばやし・ひでゆき)●京都高低差崖会崖長。NHK番組『ブラタモリ』の京都編・奈良編にて案内役を担当。著者に『京都の凸凹を歩く』『京都の凸凹を歩く 2』(青幻舎)がある。趣味は高低差探し、看板ウォッチング、銭湯、くるみパン集め。


illustration=YUKIEMARU



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「TRANSIT52号 小さな京都の物語を旅して」は、日本が世界に誇る「京都」について深く知ることができます。伝統と新しさ、独自の文化が育まれた京都に想いを馳せて、旅してみてはいかがでしょうか。

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