京都のなかの外国を探す旅
【52号 小さな京都の物語を旅して】

COLUMN | 2021.07.07

京都にはいたるところに神社仏閣があるのに、西欧的な雰囲気が漂うところが少なくない。町家に発見するレトロ喫茶やモダン建築、大通りと街路樹、洗練された風景のなかには実は外国の存在がある。古くから、海外文化を取り入れ、アレンジし、オリジナルのものにしていった京都。その影響を見つけに京都市と宇治市を歩く。
 
京都の夏の風物詩である祇園祭。その豪華絢爛な山鉾(やまほこ)の装飾が、異国の美術品や金工品であることは知っているだろうか? 外国のものはいつの時代でもかっこよく感じるもの。遡れば、日本文化とよばれるものは、ほとんどといっていいほど中国に由来している。仏教や漢字、建築技術や醸造技術なんかもそうだ。
 
まず向かったのは、宇治市にある〈萬福寺〉。禅寺の中国様式がそのまま残る貴重なお寺で、1661年につくられた。ここでは建築様式、経、仏像、すべてが中国様式だ。萬福寺ができるきっかけになったのは臨済宗の龍渓らが、中国の臨済宗を代表する隠元禅師を日本に招いたこと。このとき煎茶の文化や明朝体や原稿用紙、胡麻豆腐やインゲン豆が持ち込まれた。萬福寺の見どころは、美しい仏像の数々。「弥勒菩薩坐像」「羅怙羅尊者(らごらそんじゃぞう)」、エキゾチックなお顔を拝見しよう。
 
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©️MAI KISE
 
〈萬福寺〉
京都府宇治市五ケ庄三番割34

 
 
ここからは京都市内を歩いて、建築巡り。祇園四条の鴨川沿いにある〈東華菜館〉は、本格的な北京料理店だが、建物自体にも魅力がある。1926年にアメリカ人建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計したスパニッシュ・バロックの洋館。大正には洋食レストランだったが、その後、戦時色が深まるなか中華料理になったのだ。館内には、蛇腹式内扉や時計針式のフロアインジケーターが残る日本最古のエレベーターもあるが、見学のみは不可。食事をしながら内観を楽しもう。
 
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©️MAI KISE
 
東華菜館
京都市下京区四条大橋西詰

 
 
ほかにも異国情緒溢れる建築というと、四条小橋を南に少し下がった路地に〈フランソア喫茶室〉がある。1934年に創業以来、クラシック音楽とコーヒー好きの若者を中心に愛されてきた。現在のインテリアは1941年に大規模な改装を行ったときのデザインで、京都大学のイタリア人留学生らの芸術仲間が手がけたという。反政府運動のサロン的な存在として知られ、故ドナルド・キーン氏も通っていたのだとか。
 
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©️MAI KISE
 
フランソア喫茶室
京都市下京区西木屋町通四条下ル船頭町184
営業時間:10:00〜22:00 (LO. フード類21:00、ドリンク&ケーキ21:30)
定休日:無休 *年末年始以外 

 
 
地下鉄烏丸丸太町の北西出口すぐ、〈大丸ヴィラ〉も外せない建築スポット。1930年に、大丸百貨店主の下村正太郎が建てたヴォーリズの建築でイギリスのチェーダー様式でまとめられた洋館だ。急勾配のレンガの屋根、煙突、半木造のハウスティンバーという構造で、変化に富んだ外観。京都市登録有形文化財にも登録されている。
 
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©️MAI KISE
 
〈大丸ヴィラ〉
京都府京都市上京区春日町烏丸通丸太町上る433-2

 
 
ランチは〈ナグネコプテギ〉で。ドラム缶とサムギョプサルとハングルだらけの店内は、まるで韓国にいるみたい。やかんから注がれるマッコリ、豚皮やオムギョプサル(豚バラ五枚肉)など本格的なメニュー、韓国ドラマのセットに入り込んだような気持ちになれる。
 
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©️MAI KISE
 
〈ナグネコプテギ〉
京都府京都市中京区大文字町242-5
営業時間:17:00-23:00(ラストオーダー22:00)
定休日:木曜日・第3水曜日

 
 
ランチを食べた後は、〈李朝喫茶 李青〉でちょっと一息。韓国人の女性オーナーが営む出町柳のカフェで、土蔵造りの民家のなかには李朝時代(1392年から1910年にかけての李王朝が君臨した時代)の家具などがセンスよく置かれている、落ち着ける場所だ。さらに韓国の伝統的なドリンクやスイーツも充実。「韓方茶」「人参茶」「五味子茶」といった普段はあまり口にしないお茶や、「韓国餅」などのスイーツが楽しめる。器や工芸雑貨も一角に置かれており、購入可能。王朝時代の朝鮮半島をイメージして楽しんで。
 
李朝喫茶 李青
京都府京都市上京区梶井町448-16
営業時間:11:00-18:00
定休日:月・火曜日

 
 
さて、今度はまた中国へ。〈京都 小慢(シャオマン)〉は、御所北の静かな住宅街に佇む築100年の小さな民家をリノベーションしたギャラリー。陶芸や古道具、金工品などの作家の古典が月ごとに入れ替わるので、通うのが楽しい。中国茶葉の販売もしており、オリジナルの中国茶もあり。また、中国茶の茶道教室もあるので興味がある人は事前に連絡してみるといいだろう。
 
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©️MAI KISE
 
京都 小慢(シャオマン)
京都府京都市上京区幸神町313
営業時間 :12:00-18:00
定休日:月曜日

 
 
もうひとつ行きたいギャラリーが。1984年に来日した陶磁器専門家のロバート・イエリンさんが営む〈ロバートイエリンやきものギャラリー〉。哲学の道沿いに位置する趣深い古民家で、数多の貴重な作品を展示している。今は海外から来られない人も多いことを考慮して、WEBサイト上でギャラリーをオンラインバーチャルツアーできる工夫がされており、展示品も日々入れ替わっている。日本のやきものを海外に向けて発信し、また海外から京都に訪れたお客さんに直接その魅力を伝えて来たロバートさん。ぜひ館長に話かけて、いろいろ質問してみよう。
 
ロバートイエリンやきものギャラリー
京都府京都市左京区銀閣寺前町2

 
 
さて、最後は国内外のアーティストや表現者が集まるサロンのような存在の〈Farmoon〉へ。昼は〈茶楼farmoon〉としてお茶やお菓子を提供し、夜はプライベートレストランとして営業している。オーナーで料理人の船越雅代さんは、アメリカやフランス、バリなどで食の表現者として世界を飛び回り、京都へやってきた。空間デザイナー・柳原照弘さんとともにつくあげたという空間のまんなかには円卓が。料理人やアーティストの交流の場であり、イベントの際にはアイコンになる発信の場にもなっている。
 
Farmoon
営業時間:11:00 - 16:30(L.O)
定休日:金・土・日曜日以外

 
 
京都のなかにある異国の姿。そして、今も感じる海の向こう側とのつながり。京都の見え方が少し変わりそうだ。TRANSIT52号の企画「異国の京都」でも、京都と海外との関係について旅をしているので、誌面と合わせてお楽しみください。
 
*今回紹介したスポットをマップにまとめました。

 
 
text=ANNA HASHIMOTO
  
 

お詫びと訂正