世界のカレーストーリー #2
タイの豚とピーナッツのレッドカレー
【53号 世界のスパイスをめぐる冒険】

COLUMN | 2021.09.22

インドや日本のみならず、世界に広がるカレーネットワーク。
その味を家でも味わいたい!というわけで、
おいしいカレーに出会える東京の料理屋さんのキッチンへ。
本誌の拡大版でレシピとカレーストーリーをお届けします。
第2回は吾妻橋にあるタイ料理屋さんへ。

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Curry Story#2 / Thailand
 タイ人の父、母、娘、そして娘の旦那さんが営む〈モンティ13〉は、激辛で知られる浅草のタイ料理店だ。汗を流し、涙を流し、それでも手が伸びてしまう料理の数々、ゲーン キィヨワン(グリーンカレー)、ムーマナォ(豚肉サラダ)、ガパオは中毒性抜群だ。


 今回教えてもらったのは、辛さの先にスパイスの奥深さが広がるパネーン ムー(豚肉とピーナッツのレッドカレー炒め)。水中メガネを装着して万全の涙対策で鍋を振るのは母ヤーイさん。食材とスパイスを次々と中華鍋に入れて、強火で一気にカレーを仕上げる。ひとくち食べると、濃厚なピーナッツの香りが広がってマイルドな口当たり。ふたくち、みくち、スプーンを運んでいると、突然、辛さの波に襲われる。一見、少量に見えたトウガラシが効いてくる。できるだけタイ産のものを仕入れているそう。辛い。けどやめられない! 汗をかきながら食べすすめていくうちに、爽快感に変わっていく。


それにしても、なんでこんなに辛いの? ホールを担当する娘のターさんに訊いてみると......。


「生まれ育ったのは、タイ北部のスコータイの田舎町。小さい頃、晩ご飯はいつも近所の親戚の家に集まってみんなで食べていたんですね。大人用、子ども用なんて分けずに、大鍋からよそってカレーを食べていて、『あぁ、また辛いグリーンカレーか』と思いながら食べていたはずなんですが、物心ついたときには辛さに慣れちゃいました。え、お店の味が辛い? 私にとってはちょうどいいんですけどね。ちなみに日本人の旦那さんはお腹が弱くて、お店のごはんを食べられないんです(笑)」とターさん。


「母はタイでも日本でもずっと料理をしていて、頑固ともいえるくらいこだわりが強い。納得のいく食材が揃わないとその日のお店のメニューから外してしまうんです。『最良のものじゃないとお店には出さない』とよく母が言っています。それに娘の私にだってレシピを秘密にしてるくらい。だから今回紹介したパネーン ムーのお店で仕込んでいるレッドカレーペーストの中身は内緒。でも家でやるなら、今日教えて作り方でも十分おいしくなりますよ!」と話してくれた。


 お店のカレーは辛くて食べられないけど、タイへの愛は誰にも負けない浅草生まれの旦那さん、高橋良典さんにもお店の話を訊いた。


「もともとは浅草駅直結の地下街で最初にタイ料理店を出したんです。今の吾妻橋の地上のお店に移転したのがちょうど13年目だったから、お店の名前に『13(シップサン)』といれました。タイでは、自分の好きな数とか住所の数字を店名につけることが多いんですよね。『モンティ』は、昔、別のタイ料理店で一緒に働いていたタイ人の料理長の名前なんです。実は、その料理長には別の名前があったんですが、VISAに不備があったみたいで、彼が日本からタイへ一時帰国した時期があったんです。そして日本に戻ってきたら名前が『モンティ』に変わっていた。同僚のタイ人も何事もなかったかのように『モンティさん、モンティさん』と呼んでいる。そんないい加減さ、強かさがいいなと思って。私も生まれ変わるならタイ人になりたい、名前はモンティにしたいと思ったんです」と笑いながら教えてくれた。


〈モンティ13〉に行けば、そんなタイの風を感じることができるかも? そしてぜひ妥協のない旨辛ループを、お店でも家でも体感してほしい。

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★豚とピーナッツのレッドカレー炒め(2人分)


乾燥ピーナッツ..............大さじ1
豚バラ肉.........................200g
赤、黄、緑ピーマン.......各1/2個

サラダ油.........................大さじ1

A
レッドカレーペースト
*市販のタイのレッドカレーペーストを容量に合わせて入れる
カレーパウダー................少々 
クローブ......................... お好みで
ココナッツミルク...........50㎖
牛乳.................................50㎖
輪切りした生の青唐辛子、赤唐辛子....各大さじ1/2
コブミカンの葉...............1枚
ナンプラー......................小さじ1
鶏ガラスープ.......................お玉1/3


①ピーナッツをミキサーにかけて砕いておく。ひと口大に切った豚肉を湯通ししておく。ピーマンをくし切りにする ②フライパンに油をひいて、Aを上から順に入れる ③火が通ったところでピーナッツを入れる ④豚肉を入れて火が通ったところでピーマンを入れる。ピーマンがシャキッとしている時点で火を止める。お好みで目玉焼きをごはんに載せる




Shop Data
〈モンティ13〉
住:東京都墨田区吾妻橋1-7-7
電:03-5637-8112
休:火




photography=MASAFUMI SANAI
text=MAKI TSUGA(TRANSIT)



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web記事ではここまでのご紹介。「TRANSIT 53 世界のスパイスをめぐる冒険」を読めば、人間とスパイスの長くて深い関係がよくわかるはず。誌面でスパイスの旅を楽しみつつ、日々の暮らしにスパイスを取り入れる世界の知恵もみえてきます。




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