世界のカレーストーリー #5
カンボジアのサツマイモとココナッツのカレー
【53号 世界のスパイスをめぐる冒険】

COLUMN | 2021.09.28

インドや日本のみならず、世界に広がるカレーネットワーク。
その味を家でも味わいたい!というわけで、おいしいカレーに出会える
東京の料理屋さんのキッチンへ。レシピとカレーストーリーをお届けします。
第5回目はカンボジア料理のお店〈アンコールワット〉へカレーのお話を訊いてきました。


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#Curry Story5 / Cambodia
丸太のように大きなサツマイモが、赤いスープからごろんと顔を出す。焼き芋みたいに甘くてほくほく、お芋だけで十分満足感がある。一見辛そうだけど、ココナッツミルクベースで角のないやさしいカレー。店長のゴ・シュウジさんにとってカレーとはなんだろう?


「カレーはご馳走。現地で日々食べているのは、焼き魚や野菜炒めのようなシンプルな料理が多いから、それに比べるとカレーはひと手間かかっているように感じるんでしょうね。お祝いごとがあるとき、親戚が集まるときに、一人ひとり自分のお皿にごはんをよそって、鍋からカレーを取って食べていました。日本人が思うカレーライスとは少し違って、スープのような感覚で食べていましたね。タイも『ゲーン(=汁物の意味)』といってカレーのようなものを指すから、タイ人とカンボジア人のカレーに対する印象は似ていると思います。カンボジアで食べるカレーは、トゥック・トレイと呼ばれる魚醤を入れたり、鶏のモツを使うけど、お店では日本人の食べやすいように、そういったものは入れていないですね」と語る。


〈アンコールワット〉は、1982年にシュウジさんのお父さんが代々木で開業したカンボジア料理店。日本に来るきっかけは内戦だった。


「1971年に首都プノンペンで生まれ、ポル・ポト政権後の内戦の混乱のなか、10歳のときに家族5人で難民として日本に渡ってきました。カンボジアにいた頃は、いつもお腹を空かせていましたね。政府の命令で一家みんなでバッタンバンに強制移住することになって、所有していた紙幣を全部燃やしたのを覚えています。前の政権が発行した紙幣をもっていると、彼らを支持していることになってしまうし、お金が使えなくなっていたからです。移住したバッタンバンの村では強制的に農作業をしていましたが、配給制で農作物はすべて国に徴収されてしまうから、ろくにごはんが食べられませんでした。昼間、自分たちが作った芋やトウモロコシを土の中に埋めて、夜中に掘り出して食べていたのを覚えています。カレーを食べられるようになったのは、戦争が終わってからでしたね」。


限られた食材を大事に料理する。それだけで満ち足りたご馳走になることを、シュウジさんのカレーが教えてくれた。

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★サツマイモとココナッツミルクのチキンカレー(2人分)

A
乾燥唐辛子.............1本
ニンニク.................1かけ
レモングラス..........1本
ガランガル..............1かけ
ターメリック...........1かけ


サツマイモ.........小1個
ナス....................小1個
鶏モモ肉...............2枚
タマネギ..............1/2個
サラダ油.............大さじ1
カレー粉.............小さじ1~2
(シナモン0.5、ターメリック0.5、砂糖1、塩1の割合)
ココナッツミルク........200㎖
水.................................500㎖
コブミカンの葉.............3枚
塩...........................お好みの分量
砂糖.......................お好みの分量


①乾燥唐辛子を水につけてやわらかくしてから、Aをミキサーにかけ、フライパンで火入れしておく ②サツマイモ、ナス、鶏肉はひと口大に、タマネギはくし形に切る ③鍋に油をひいて、①と肉を入れて炒める ④カレー粉、ココナッツミルク、水を入れて煮込む ⑤サツマイモを入れて約20分、串が通るまで煮込む ⑥ナス、タマネギ、コブミカンの葉を入れて火が通るまで煮込む ⑦塩、砂糖で味を調える




Shop Data
〈アンコールワット〉
住:東京都渋谷区代々木1-38-13 住研ビル1F
電:03-3370-3019
休:無休




photography=MASAFUMI SANAI
text=MAKI TSUGA(TRANSIT)



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