スパイスってなんだ?
科学的にみたスパイスのチカラ
【53号 世界のスパイスをめぐる冒険】

COLUMN | 2021.09.14

20210906_1.jpg
TRANSIT53号は『世界のスパイスをめぐる冒険』を特集。まずは知っているようで知らないスパイスの世界を、科学的観点から紐解きます。スパイスが私たちの身体にどのように作用するか、「基本編」「身体編」でお届け!


[ 基本編 ]


スパイスがもつ食べ物としての機能は、大きく4 つに分類されます。
ほとんどのスパイスが複数の作用を同時にもち合わせています。


香りづけ(賦香効果)

もっとも重要な働きのひとつであり、ほとんどのスパイスが豊かな香りをもっている。スパイスを料理に加えることで、その香りが食材の味を引き立たせるほか、食欲を増進させる効果も期待できる。


色づけ(着色効果)

パエリアやブイヤベースの鮮やかな黄色もスパイスによるもの。色づけに用いられる代表的なスパイスであるサフランは、めしべの水溶性の色素成分によって、液体を黄色に染め上げる。たくあんも日本のスパイスであるクチナシによる色だ。


辛味づけ(呈味効果)

スパイスによる呈味効果(味を与えること)は、そのほとんどが辛味性を期待され用いられている。ひと口に辛味といっても、ピリッとしたり、ヒリヒリしたりその種類はさまざま。唐辛子、胡椒、山椒などそれぞれ別の辛味成分をもっている。


臭み消し(矯臭・脱臭効果)

肉や魚などの生臭さや、野菜の青臭さを香りによって感じにくくする(マスキングと呼ばれる)効果がある。とくにニンニクやネギなどのユリ科の植物は臭みを取り除き、シソ科のスパイスやハーブは、科学的に消臭効果が認められている。


[ 身体編 ]


スパイスを体内に取り入れたときに、さまざまな反応を示す私たちの身体。ここからはQ&A方式で、日常の食事シーンで感じる疑問から、スパイスと生理機能のメカニズムを解説していきます。


Q.辛味はどこで感じている?

A.体内では、痛みや熱と同じように感じている

いわゆる5つの基本五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)は、舌の味を感じる器官「味蕾(みらい)」が飲食物によって刺激されることで感じられます。一方、辛味は舌や口腔内の感覚神経にあるカプサイシン受容体や冷刺激受容体が活性化することで、痛覚や温度感覚として脳に伝達されています。


Q.スパイスの香りの正体は?

A.精油(エッセンシャルオイル)と呼ばれる揮発性の成分

精油は、植物から産出される揮発性の油。これが香りの正体です。スパイスを口にしたとき、ヒトのもつ2つの嗅覚経路で香りを感知しています。立ちこめる匂いを鼻先から感じる「オルソネーザル」と、口にしたあとに鼻に抜ける香り「レトロネーザル」によって食べ物の風味を豊かにします。


Q.唐辛子で舌がヒリヒリ!

A.牛乳やヨーグルトなどの乳製品がおすすめ

刺激をやわらげるのに、どうしても冷たい水を飲みたくなりますが、実は逆効果。カプサイシンなど多くの辛味成分は水に溶けにくいため、余計に辛く感じてしまいます。乳に含まれるタンパク質カゼインはカプサイシンと親和性があるため、辛味を舌から取り除くことができます


Q.スパイス料理を食べると汗が出るのはなぜ?

A.アドレナリン効果で、体温UP&発汗が促進されるから

生姜や唐辛子など体を温めるスパイスの辛味成分によって感覚神経が刺激されると、アドレナリンが分泌されます。そのためエネルギー代謝が活発になり、体温が上昇し発汗が促 されます。また、汗が体表で蒸発するときに気化熱によって熱が奪われるため、クールダウン効果もあります。


Q.辛いけどまた食べたい!やみつきになるのはどうして?

A.刺激と多幸感の脳内ホルモンが分泌されているから

脳内では、知覚した痛み(=辛味)を抑えようと2つの神経伝達物質が分泌されます。β-エンドルフィンは鎮痛効果を示すほか、気分の高揚をもたらします。ドーパミンはやる気や幸福感を増幅させます。適度な刺激と、そのあとに感じる多幸感から、辛い食べ物がやみつきになるのです。


Q.山葵を食べると鼻がツーンとして涙が出るのはなぜ?

A.辛味成分「アリルイソチオシアネート」が鼻腔まで広がるから

山葵や辛子の「ツーン」とした辛味は、「アリルイソチオシアネート」という成分が関係しています。カプサイシンとは違って山葵の辛味成分には揮発性があり、口にふくむと気化して鼻のほうに抜けるため、独特の辛味を感じ、涙が出るのです。


Q.スパイスは身体の調子を整える?

A.独特の味や香りを楽しむほかにも、身体によい効果をもたらします

たとえば、生姜や山椒、シナモンなどは、生薬として漢方薬にも使われるスパイスで、唾液 の分泌を促したり消化管機能を増進させる「芳香性健胃生薬」として利用されています。食べ過ぎは禁物ですが、適量の唐辛子は胃粘膜を保護する働きがあることも報告されています。



53_001-minmin.jpg

「TRANSIT 53 世界のスパイスをめぐる冒険」を読めば、人間とスパイスの長くて深い関係が見えてきます。誌面でスパイスの旅を楽しみつつ、日々の暮らしにも世界のスパイスの知恵を取り入れてみたくなるのでは。




TRANSIT最新号「世界のスパイスをめぐる冒険」

特集内容:インド、タイ、中国、バーレーン、沖縄、日本カレー狂時代、香辛料の歴史、薬草学、世界が恋する唐辛子、植物図鑑ポスター......etc.
定価:1,800円 + tax

WEBでの購入はこちらから! Amazon楽天ブックスfujisan.co.jp

お詫びと訂正