人間とスピリチュアルな植物たち
【53号 世界のスパイスをめぐる冒険】

COLUMN | 2021.10.08

人びとは植物の効用を知り、信仰や儀式、民間医療に用いてきた。そう、それは科学的な分析が行われる遥か昔から......。


 TRANSIT最新号「世界のスパイスをめぐる冒険」は空前のブームとなっている"スパイス"に焦点を当てた一冊です。


「ちょっとアブナイ薬草学」と題した企画では、30万種以上ともいわれる地球上の植物の不思議を、「図鑑」「文化人類学」「法律」「雑学」とさまざまなテーマで紐解きました。


 ここでご紹介するのは、「信仰と儀式を司る植物たち」。植物が担ってきた信仰とカルチャーを覗いてみましょう。

 
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メキシコ先住民の "幻覚サボテン"
ペヨーテ

メキシコのウイチョル族のシャーマンは決まった季節になると「ペヨーテ狩り」と称した旅に出る。メスカリンを含むサボテンの一種・ペヨーテを見つけ出し、服用することで幻覚を見ながら踊り、雨や健康、物質的な繁栄を祈る。ちなみに民芸品としても人気のあるウイチョル族のサイケデリックなビーズ作品や織物はペヨーテによる幻覚作用を表現したもの。近年は、ペヨーテは精神的昂揚感をもたらすがまったく副作用は認められないという研究もあり、アルコールや大麻よりも優れた向精神薬として注目されている。ただし、かなり苦い。




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アメリカ先住民・チュマシュ族が
壁画に残したチョウセンアサガオ

カリフォルニア南部で暮らしていたチュマシュ族は、成人の儀式や予言の際にサイケデリックな視覚を得られるチョウセンアサガオを用いていたと考えられている。1530~1890年頃まで使われていた洞窟には、チョウセンアサガオが壁画として描かれたり、幻覚成分を摂取するために嚙み砕いたと推定される繊維の塊が残されていた。研究によると幻覚作用は浄化と癒やしの儀式に使用されたという。20世紀までアメリカ政府により抑圧されていたこともあり、今となってはその伝統の多くは失われてしまった。




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埋葬の儀式か死者との交信か
最古の大麻吸引は中央アジアから

中央アジアのパミール高原にあるジルザンカル墓地から木製の香炉が見つかった。推定年代は2500年前。科学的な検証を行ったところ、マリファナの有効成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を検出。つまり大麻草を火で熱して炙り、その煙を吸っていた証拠が見つかったのだ。墓の周囲には石が並べられており、死者を弔うために使われたと考えられている。また中国北西部の遺跡では埋葬された男性の亡骸の上に置かれた13本の大麻草が発見されている。のちに大麻はその神秘的な効用とともにシルクロードを通じてユーラシア大陸各地へと広まっていった。




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アマゾンのシャーマン御用達
アヤワスカのティーカルチャー

アマゾン源流域に暮らす先住民たちは、アヤワスカと呼ばれる特殊な植物由来の飲み物を利用して宗教儀式や医療を行ってきた。洞窟遺跡から見つかった約1000年前のポーチから成分が検出され、古くからシャーマニズムに利用されてきたことがわかっている。ビートニク作家を代表するウィリアム・バロウズとアレン・ギンズバーグによる書簡集『麻薬書簡』では「究極の麻薬植物(Yagemaybethefinalfix)」と紹介され、欧米を中心に愛好家も多い。近年はアヤワスカ・リトリートと称した体験ツアーも催されるほど。




 



illustration=SHIZUKA IDE
text=KOSUKE KOBAYASHI




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TRANSIT最新号「世界のスパイスをめぐる冒険」

特集内容:インド、タイ、中国、バーレーン、沖縄、日本カレー狂時代、香辛料の歴史、薬草学、世界が恋する唐辛子、植物図鑑ポスター......etc.
定価:1,800円 + tax

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