アヤワスカ 、ペヨーテ、コカノキ......
毒か薬か!? あぶない薬草図鑑
【53号 世界のスパイスをめぐる冒険】

COLUMN | 2021.10.06


 30万種以上ともいわれる地球上の植物。食用として、薬として、私たち人間は古くから植物を研究し、利用して生きてきた。スパイスやハーブのように心身を健康にする植物もあれば、心と体を惑わすアブナイ植物があるのも事実。はたして人間が見つけた叡智なのか、それとも植物からの挑戦なのか。


 TRANSIT最新号「世界のスパイスをめぐる冒険」では"スパイス"に焦点を当てました。
 
「ちょっとアブナイ薬草学」と題した企画では、30万種以上ともいわれる地球上の植物の不思議を、「図鑑」「文化人類学」「法律」「雑学」とさまざまなテーマで紐解いています。

20210916_03.jpg


 その中から今回ご紹介するのは、「薬草図鑑」。
  
 植物は虫や鳥や私たち人間から身を守る手段として、毒を生み出した。その成分は、ときには人間が死に至る毒薬となり、法律で規制されるような麻薬にもなり、使い方によっては我々を癒やす医薬品にもなる。不思議なチカラを秘めた植物を見ていこう。


20210916_01.jpg


薬か毒か!? アブナイ薬草図鑑

 
植物は虫や鳥や私たち人間から身を守る手段として、毒を生み出した。その成分は、ときには人間が死に至る毒薬となり、法律で規制されるような麻薬にもなり、使い方によっては我々を癒やす医薬品にもなる。不思議なチカラを秘めた植物を見ていこう。


 

●ペヨーテ
Lophophorawilliamsii
原産:メキシコ北部など


烏羽玉(ウバタマ)とも呼ばれ、観賞用としても流通するサボテンの一種。メキシコのウイチョル族が儀式で使用することで知られる。乾燥させたものを水に溶いて服用すると鮮やかな幻覚を得られる。
1_2021-10-06 23.57.33.png

 
●サンペドロ
Echinopsispachanoi
原産:エクアドル、ペルーなど
 
微量の精神活性アルカロイドを含むサボテン。観賞用に柱サボテン、多門柱という名前で流通している。アンデス地方では神への祈りを捧げる儀式で、サボテンがもつ幻覚作用が利用されてきた。
2_2021-10-06 23.58.05.png




●バニステリオプシス・カーピ
Banisteriopsiscaapi
原産:ペルー、エクアドルなど
 
キントラノオ科のつる植物で、南米のシャーマンが宗教儀式や伝統療法に利用してきた薬用茶アヤワスカの原料のひとつ。幻覚をもたらすアルカロイドの一種であるハルミンとハルマリンなどを含む。
3_2021-10-06 23.58.35.png




●サルビア・ディビノラム
Salviadivinorum
原産:メキシコ
 
シソ科アキギリ属の多年草。幻覚作用のあるサルビノリンAを含む。リラクゼーション効果、幻聴などをもたらす。アメリカではマジックミントやレディ・サリーといった呼称で流通している。
4_2021-10-06 23.59.09.png




●シビレタケ
Psilocybevenenata
原産:日本など
 
幻覚成分シロシビンを含み、かつてはマジックマッシュルームという呼称で流通。視覚の変化が大きく、虹色に見えたり目が回るなどの効果がある。日本では麻薬取締法で所持、使用が規制されている。
5_2021-10-06 23.59.35.png




●チョウセンアサガオ
Daturametel
原産:南アジア
 
ナス科の植物で根や茎にアルカロイドを含む。鎮痛剤や麻酔薬として明代の中国や江戸時代の日本でも使われてきたが、幻覚や妄想を引き起こす作用も。日本麻酔科学会のシンボルマークになっている。
6_2021-10-07 0.00.10.png




●ベニテングダケ
Amanitamuscaria
原産:ヨーロッパ、アメリカ、日本など
 
毒キノコの代表的存在。イボテン酸やムスカリンなどの毒素がめまいや錯乱、興奮といった神経系の症状を引き起こす。下痢や嘔吐を伴うケースが多い。日本では塩漬けにして食用とする地域もある。
7_2021-10-07 0.00.41.png




●コカノキ
Erythroxylumcoca
原産:南アメリカ
 
コカノキ科の常緑低木。アンデス山脈に生育し、葉にアルカロイドの一種コカインを含む。先住民は葉を嚙んで成分を摂取し疲労回復や儀式に用いる。常用すると栄養障害や精神障害の危険がある。
8_2021-10-07 0.01.11.png




●ビンロウ
Arecacatechu
原産:広域なアジア諸国
 
台湾をはじめアジア各地では嚙みタバコとして親しまれている。細く切った果実をコショウ科の植物の葉に包み、石灰を混ぜて嚙むとアルカロイドが作用して興奮、酩酊感を味わえる。
9_2021-10-07 0.01.53.png




●アラビアチャノキ
Cathaedulis
原産:北東アフリカ、アラビア半島など
 
カートとも呼ばれるニシキギ科の常緑低木。乾燥した高地に生育し、葉にアルカロイドの一種カチンを含む。摂取すると高揚感や多幸感を得られイスラーム圏では酒の代用品として親しまれる。
10_2021-10-07 0.02.23.png




●大麻草
Cannabissativa
原産:中央アジア
 
アサ科アサ属の一年草。古くから繊維は衣服や日用品に、種子は食料として活用されてきた。幻覚成分を含む部位を乾燥させて刻んだものをマリファナと呼ぶ。心身のリラックス、鎮痛、鎮静、食欲増進効果など。
11_2021-10-07 0.03.18.png




●ベラドンナ
Atropabella-donna
原産:ヨーロッパ西部など
 
ナス科の多年草。全草にアルカロイドの一種を含む。古くから鎮痛や鎮痙、止汗、散さん瞳どうなどの効果が薬として用いられてきた。しかし毒性が強く、呼吸困難や昏睡といった障害を引き起こす可能性がある。
12_2021-10-07 0.03.50.png




●ケシ
Papaversomniferum
原産:地中海沿岸~中央アジア
 
ケシ科ケシ属の一年草。果実に強い鎮痛成分のあるモルヒネを含み、液体を集めて乾燥させたものが鎮痛、鎮静効果のある麻薬・アヘンとなる。日本ではあへん法や麻薬取締法で所持、譲渡、栽培等が禁じられている。
13_2021-10-07 0.04.16.png




●トリカブト
Aconitumjapoiumssp
原産:日本など
 
日本三大有毒植物に数えられるキンポウゲ科の多年草。附子と呼ばれる生薬は新陳代謝の改善などに役立つが、毒成分アコニチンを含むため、そのまま食用すると嘔吐や呼吸困難の危険も。
14_2021-10-07 0.05.09.png




●ターネラ・ウルミフォリア
Turneraulmifolia
原産:南米・西インド諸島など
 
トルネラ科の灌木で黄色い花を咲かせる。アルカロイドを含み、乾燥した葉には精力増強や生殖機能向上、抗うつや強壮、利尿、咳薬といった効果が。過剰摂取はけいれんを起こすため注意が必要。
15_2021-10-07 0.07.05.png




●セージ
Salviaofficinalis
原産:地中海周辺
 
シソ科アキギリ属の多年草。肉の臭み消しや香辛料として料理に用いられる代表的なハーブのひとつ。精油成分ツヨンは食欲増進や消化促進などの薬用効果をもつ一方、神経毒性や流産の危険性もある。
16_2021-10-07 0.06.21.png




illustration=SHIZUKA IDE
text=KOSUKE KOBAYASHI




53_001-minmin.jpg
 
TRANSIT最新号「世界のスパイスをめぐる冒険」

特集内容:インド、タイ、中国、バーレーン、沖縄、日本カレー狂時代、香辛料の歴史、薬草学、世界が恋する唐辛子、植物図鑑ポスター......etc.
定価:1,800円 + tax

WEBでの購入はこちらから! Amazon楽天ブックスfujisan.co.jp

お詫びと訂正