
TRANSIT49号 美しき消えゆく世界への旅
発売日:2020年9月17日
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はじまりは、人工衛星を駆使して地球を撮影したベンジャミン・グラントさんの作品と寄稿文から。地球をもっともマクロな視点で見ることができる宇宙飛行士は、概観効果という境地に至り、地球に対する畏怖の念を抱いてまるで生まれ変わったような心になるといいます。それを聞いたことをきっかけに、俯瞰写真を撮り始めたグラントさんの作品は私たちの知らなかった地球の圧倒的な姿を見せてくれます。
大規模な火災が発生しつづけていたオーストラリアの森林で、火災と立ち向かう地元の人びとや、力強い自然を切り取った「火の森を追いかけて」、そして海面上昇により土地が侵食されているツバルの住人たちを訪ねた「沈みゆく楽園」では、地球の危機が進行している現場を目の当たりにした写真家たちが感じたことが言葉と写真で綴られています。
ほかにも、ウガンダへゴリラやチンパンジーなどの野生動物に会いにいった「動物たちのいるところ」や、知床・屋久島の日本の国立公園を訪ねた企画など、自然のありのままの姿と自然と人間が折り合いをつけてともに生きていこうとする姿に触れる旅にも出ています。
自然環境について理解するには、科学的な知識も大切。地球46億年の長い歴史をすごろくにまとめた企画や、温暖化やオゾン層破壊、砂漠化、生物多様性の崩壊......などなど今の地球が直面している問題を俯瞰してとらえた企画を読めば、知っているようで、細かいことまで把握していなかった地球のことを学ぶことができます。
また「地球再生のレッスン」と題し、地球を痛みつけてきた人類の反省のあり方をHR、歴史、家庭科、修学旅行......と科目別に紹介。国際社会の気候変動に対する取り組みの歩みや、次世代の食料として注目の昆虫食、グレタ・トゥンベリが始めた活動を日本で展開する「Fridays For Future Tokyo」のメンバーが考えた地球に優しい修学旅行、そして究極の地球環境保護の選択肢としてたびたび話題になる「反出生主義」についてなど、深く掘り下げています。
今号は付録も充実。4人のアーティストが描き下ろした、ちょっと地球のことを考えたくなるステッカーと、日本の国立公園の一覧と屋久島の美しい写真が裏表になったポスターがついています。
前号につづき、地球を大きな旅先としてとらえてつくった一冊。「消えていく」かどうかは我々次第。美しい地球の姿とその未来について思いを馳せるのはいかがでしょうか。
特集記事
- 地球周回軌道上の旅
【ベンジャミン・グラント=写真・文】 - 火の森を追いかけて/オーストラリア
【柏田テツヲ=写真・文】 - 美しい海の星
【高砂淳二=写真・文】 - 沈みゆく楽園/ツバル
【ロビン・ハモンド=写真・文】 - 動物たちのいるところ/ウガンダ
【清水はるみ=写真・文】 - ミツバチがつくる宇宙/キルギス
【阿部裕介=写真・文】 - 揺らぎながら生きる人びと
【グレタ・ライバス=写真・文】 - 自然とともに、半島で生きる/北海道・知床
【石塚元太良=写真 菅原信子(TRANSIT)=文】 - 山から海へ、水がめぐる島/鹿児島県・屋久島
【阿部裕介=写真 林紗代香(TRANSIT)=文】
特集企画
- 地球再生へのレッスン
- 歴史/資本主義と環境問題/データ/動植物/リーダーのことば
- 昆虫食/江戸時代/環境ワード/ビル・ゲイツとテクノロジー
- 人口調整/未来都市/エコ映画/エコ旅
- 地球のよき住人になるための新しい生活様式
- 暮らす/建てる/食べる/身に着ける/観る/引っ越す
そのほかの記事
- 誕生から消滅まで 地球史すごろく
- 対談:関野吉晴×小野りりあん
- 古代の生物と絶滅危惧種
- 先住の民の聖なる言い伝え
- ジブリが描いた未来 山本二三、寺尾紗穂、赤坂憲雄 ETC.
特別付録
- NIPPONの国立公園34 全ガイドMAP by THE NORTH FACE
- 綴じ込み付録:オリジナルステッカー4種
- 西村ツチカ/小林一毅/YOSHIROTTEN/TOMASON
人物
- 岡西佑奈
- 青木 愛
- 稲葉俊郎