文学で旅する大邱(2)

Travelog | 2019.12.19
TRANSIT42号で文学や詩についてアドバイザーとなってくれた韓国専門出版社クオンがプロデュースする「文学で旅する韓国」ツアーのレポート第二弾。2日目は、さらに文学の歴史を掘り下げるディープな旅となったようで......。 




ホテルのビュッフェで朝食を済ませ、8時半に集合してバスに乗り込み、郊外の達城郡にある大邱初のユネスコ世界遺産「道東書院(トドンソウォン)」へ。今年7月、ほかの8つ書院とともにユネスコの世界遺産としてリストに登録された、朝鮮王朝時代の書院だ。








韓国でいう「書院」とは、簡単に言えば、儒教を学ぶために、16世紀半ばから17世紀ごろに建てられた私学のこと。朝鮮王朝の理念である儒教と儒学の一学説である生理学を教えるために建てられた教育機関で、郷校(ヒャンギョ)という公立の教育機関もあるが、書院は地方で自主的に建てられた学問施設である。






韓国や日本に根深く残る性差や格差には、儒教の教えが為政者(男性)に都合よく取り入れられたせいもあると個人的には思っているのだが、当時の意識(だけでなく身分も)高い系の人たちはこれを真剣に学んだ。もちろん良い社会を志してのことだが。この書院では定員25人で20歳以上の選ばれしエリートのみが寝食を共にしながら科挙試験合格を目指して勉学に勤しんだそうだ。







敷地内には講堂や、学生が寝泊まりした東斎、西斎などがあり、朝鮮王朝時代にタイムスリップしたかのよう。先輩の部屋の東斎は柱の角が取れて丸くなっていたり、講堂の石積みに様々な石を使用したのは、それが多様性を意味しているから、など建築のそこここに思想が盛り込まれており、興味深い。







書院の門の前には、樹齢400年の見事なイチョウの木が堂々と枝を伸ばしていた。孔子が学問した所にイチョウの木があったという言い伝えから、儒教を学ぶ場には必ずイチョウを植えるようになったという。解説士の先生のお話が実に面白く、ガイドさんが気を揉むほど時間いっぱい解説していただいた。せかされながら次へ移動。












ここ数年、大邱観光で欠かせない場所となったのが「キム・グァンソク通り」だ。大邱に生まれ、数々の名曲を残しつつ若くして自ら命を絶ったフォーク・シンガーのキム・グァンソク(金光石)をテーマにした壁画や銅像で飾られた路地はインスタ映え必至。写真大好き民族韓国人の心をつかみ、廃れかけていた昔ながらの米市場の奥の通りをテーマ付けして再開発し、大成功した一例である。










ガイドブックなどには、「キム・グァンソク タシクリギキル」(改めて偲ぶ通り)などと紹介されているものもある。趣向を凝らした壁画や野外公演場のほか、かわいい雑貨店やカフェ、レコード店などが並び、見物がてら歩くのにちょうどいい。子ども向けのゲームセンターなどもあり、ストリートライブが開催される週末はカップルや家族連れで大賑わいだ。






キム・グァンソク通り至近のギャラリーTOMAという画廊も訪問した。古い家をリノベーションしたギャラリーは、多くの著名な作家が展示を行い、アート好きの人にとってちょっとした名所になっているという。この日も植物写真を撮るLee Wonhoさんというフォトグラファーの個展が開催されていた。








ツアーでは昼間に訪れたが、キム・グァンソク通りは夜はちょっとしたライトアップもされている。メイン通りのみやげ店がクローズすると、脇の通りにある小洒落たバーやレストランがオープンし、地元の若者がデートや食事に訪れる。日本でも流行っているビールのブルワリーの店もあった。こういう新旧入り乱れた感じが大邱はたまらない。



ホテルに戻る前、大邱のゲストハウス「共感(コンガム)」にも立ち寄った。ここを運営している(株)共感Seedsは、ゲストハウスと旅行代理店の運営を通じて、北朝鮮離脱民(脱北者)の若者たちや社会的弱者の地域定着と生活を支援している。その理念に共感してわざわざ宿泊しに来る外国人旅行客も多い。また2018年には神戸に共感Seedsの広報事務所と大邱・神戸市民交流センターをオープンさせ、日本からの旅行者誘致にも本格的に乗り出し、実を結び始めている。


今回、「文学で旅する韓国」ツアー一行が大邱で宿泊したのは「東横INN大邱東城路(トンソンロ)」。使い勝手の良さは日本の店舗と変わらない。東横INNは2008年4月に釜山に韓国第1号店をオープンさせて以来、地道に人気を博し、ここ大邱東城路店は今年の5月にオープンした韓国11店舗目の東横INN。2020年にはKTX利用に便利な東大邱店の開業も控えているそう。







ホテルの建つ東城路は、大邱市内でもっともにぎやかな繁華街で、ソウルに例えれば明洞に値するような若者の町。主要なコスメ店や衣料品店、書店や映画館などが徒歩圏内にだいたい揃っており、薬令市場も隣接しているのでショッピングや町ブラにも大変便利。私は今回が韓国東横INN初利用でしたが、立地、設備、朝食と三拍子揃っていて、ゆっくりしたい時、これはアリだなあと思いましたね。明日の行程ではいよいよ文学にフォーカスします。



お詫びと訂正