メキシコの大地を駆け抜けて
- ISSUETRANSIT 11号 メキシコにときめいて
- ROUTEチワワ〜クリール〜ロス・モチス〜トドス・サントス他
- PHOTO中矢俊一郎

スタート地点は北部のチワワという街。その名のとおりチワワ犬がわんさかいる......ことはなかったが、路上にはソンブレロをかぶりギターを担いだ流しのパフォーマーがちらほら。

チワワからクリールという山間の村へ、長距離バスで向かう。目的地に近づくと、窓の外には松林と奇妙な形の岩壁が現れた。

クリールに到着後、そんな奇岩の連なりに並行するように村の周辺をサイクリング。強い日差しを浴びた肌が、ひんやりとした風に撫でられるようで心地よい。

その道すがら、時折目にするのが煤けた岩肌の窪み。そこは、先住民族であるタラウマラ人の住居なのだ。彼らは過去に米国のウルトラマラソンで優勝者を出した「走る民族」としても知られるが、現在もこうした空間で一部のタラウマラ人が生活する。

村のはずれで出会ったタラウマラ人のおばさん。膣壁にも似た質感の岩壁と彼女が纏う襞状のスカートはどこか相似しているように思えたが、何か関係性でもあるのだろうか。

クリールの小学校にて。校庭の一角でたむろするタラウマラ人の少女たち。その色鮮やかな民族衣装が太陽に照らされて眩しい。

チワワ太平洋鉄道でロス・モチスに向かうべく、クリール駅で列車を待つ。しかし到着が遅れ、痺れを切らした子どもが線路上で遊びはじめた。

ようやく乗り込んだ列車は、やがて山間を縫うように走り、車窓の風景は急峻な山地へと変わった。

ディビザロ駅に列車が停まると、私たちを含む乗客のほとんどがわらわらと降り、種々のフードや民芸品を携えた売り子がわらわらと寄ってきた。

スパイシーな香りが漂う駅近辺に並ぶ屋台を通り抜けると、眼前に広がったのはグランド・キャニオンの4倍の規模を誇るコッパー・キャニオン(銅峡谷)。そのランドスケープを乗客が体感できるよう、約20分の停車時間が与えられている。